2012年04月13日更新

#657 『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』

マーガレット・サッチャー


『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』
2012年3月16日よりTOHOシネマズ日劇ほか全国にて
配給:ギャガ
©2011 Pathe Productions Limited , Channel Four Television Corporation and The British Film Institute.


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1979年から11年半に渡りイギリス首相を務めたマーガレット・サッチャーの半生を描いた人間ドラマ。


すでに公開されて1ヵ月経っており、今更かもしれませんが見ました。


サッチャーがイギリス首相を務めた任期と小生の生い立ちを重ねると、
幼稚園児から高校2年生までとなる。


こうやって自分の人生に当てはめてみると、
その在任期間の長さがより強調される。


リアルタイムに接してはいるが、小中学生の頃は映画やとんねるずやおニャン子クラブ、
「週刊少年ジャンプ」に明け暮れる毎日で、
イギリスをはじめ、国勢に強い興味を示すことはあまりなっかたと思う。


高校生になって世界史を勉強するようになってから、
若干、国際情勢とかにも興味を抱くようになったので、
正直、サッチャーの功績とかは後追いなんだが、
その功績はザックリとだけど認識はしている。


国内の不況と経済の建て直し。
フォークランド紛争。
冷戦とその終焉。


イギリスが、そして世界が大きな転換を迎えた時代を戦った鉄の女。


そんな印象なんだが、きっと同様のイメージを抱いている人も多いと思う。


で、『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』ですが、
サッチャーの晩年からスタートする。


サッチャーは既に高齢となっていて(現在86歳)、スーパーに買い物に行っても、
彼女がかつてプライムミニスターであったことに気付く者はいない。


そして、ほどなくサッチャーが認知症であることが分かる。
サッチャーが認知症であることは知ってはいたが、
首相在任中の印象しかないので、面食らう。


劇中にも同様に、以前と今の落差に戸惑う女性が出てくる。


分野はなんであれ、小生が物心ついたころに活躍していた人たちが、
今現在かなり高齢になっている。


世代的に1980年なんてついこないだという感覚がどうしても抜けないんだが、既に30年前。

当時30歳だった人は既に還暦を迎えているのだ。
当たり間のことなんだけど、時の流れの切なさが心に突き刺さる。
(若い人は分からないかも知れないけど、35歳を過ぎれば、この心境を理解してもらえると思う)


認知症を患った元首相は、家からひとりで出ることを禁じられ、
いるはずのない亡き夫と会話し、その夫の遺品を整理できないでいる。


多少のフィクションが加えられているであろう晩年の生活と、
父親の影響で政治に目覚めた若かりし頃、夫となるデニスとの出会いと結婚、
政治家としてスタートを切り、家庭を犠牲にせざるおえない女としての葛藤、
そして、下院議員時代、首相在任時のエピソードが、
サッチャーの回想という手法で描かれていく。


とにかく話の繋ぎ方が上手い。
ふとした思い出の品や音や情景を起点にして過去に飛んでいく。
実際のニュース映像も使われているんだが、全く違和感がない。


素晴らしい構成力と編集だ。
なんでアカデミー賞の編集賞部門でノミネートされなかったんだろうか?


細かいシーンも多くあるし、時代もかなり行き来する。
となると演者も大変だ。


サッチャーを演じるのは、大御所メリル・ストリープ。
若かりし頃は、アレキサンドラ・ローチに譲るものの、
30代から80代までのサッチャーに扮している。


特殊メイクの力を借りてはいるが、さすがは貫禄の演技。


どういう順序で撮影されたかは分からないが、
日によって若い頃と老いてからの時代を演じ分ける必要があったでしょう。
これってとても大変なことだと思う。


そして、サッチャーの甲高い声や仕草を似せているんだが、
それよりも目の演技がとても印象的だった。


邦題のサブタイトルに付けれた「涙」というワード。
鉄の女は涙を流すのか?


本作では是非、メリル・ストリープの目に注目して欲しい。


アカデミー主演女優賞受賞も納得の演技なんだけど、
サッチャーは、イギリス人の女優が演じた方が良かったんじゃないかな?って思わなくもない。


まぁ、メリル・ストリープはイングランドの血を引いてはいますが・・・。


『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』は、
メリルの演技力の凄さを思い知ると共に、
80年代がどういう時代だったかを再認識させられ、
妻、母、戦う女性と様々なサッチャーを垣間見ることが出来るんだが、
それよりも“老い”について深く考えさせられた。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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