2012年5月5日より全国にて
配給:東宝
©2012「宇宙兄弟」製作委員会
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昨年から小惑星探査機「はやぶさ」を題材にした映画が、
雨後の筍のように製作、公開されている。
洋画メジャーである20世紀フォックスのローカルプロダクション『はやぶさ/ HAYABUSA』(10月公開)、
今年に入ってから東映『はやぶさ 遥かなる帰還』(2月)、
松竹『おかえり、はやぶさ』(3月)と続いた。
(この他にも角川映画配給の『はやぶさ HAYABUSA BACK TO THE EARTH』が、昨年5月に公開されている)
結果、どれもあまりよい興行成績を叩き出すことは出来なかったが、
何故かこのところの日本映画界は宇宙ブーム。
そのメインイベントを担うのは東宝の『宇宙兄弟』だ。
本作は小山宙哉のコミックを映画化したもので、
JAXAが制作に大きく関ってはいるが、先の「はやぶさ」ものとは中身そのものが違う。
他の「はやぶさ」ムービーが、ちょっと高めの年齢層をターゲットにしているのに対して、
『宇宙兄弟』は、主演の小栗旬、岡田将生を見れば分かるとおり、
もう少し若い世代に向けだ。
他の映画会社は「はやぶさ」ムービーを作っているけど、
本当に宇宙ブームなの?
とはいえ、他がやるならウチもなんかしら、宇宙を題材にした映画やりましょうかね?
じゃ、「宇宙兄弟」とかどう?
「はやぶさ」に懐疑的なら、中身を代えて時流に乗る。
映画界のドンとして君臨し続ける東宝の狙いと強かさが伺える一本。
というのは冗談として、なかなかの力作でした。
一連の「はやぶさ」関連作品を一本も見ていないことから、
「宇宙に興味がないんだな」と自己分析をしてしまうぐらい宇宙に疎いし、
原作が好きなわけでもない(読んでない)。
でも見てしまうのは、まんまと東宝の戦略に乗せられた?
というわけではなく、鑑賞の動機は、“麻生久美子”。
今後、『ガール』(5月)と大泉洋と共演した『グッモーエビアン!』(12月)の公開が控えているが、
現在、ご懐妊中なので(そろそろ出産のはず)、今後、映画の出演が今までよりも減るはず。
特に妊娠中と産後1年間位は、子育てとか大変で、
時間が不規則な映画の撮影への参加はなかなか難しいでしょう。
出てもチョイ役とかじゃないかと。
本格的な復帰までは時間がそれなりにかかると踏んで、
「今、見ておかなくては!!!それも出産前の麻生久美子を!!」
ということで鑑賞。
いや〜、今回も良い役でしたぁ〜。
宇宙飛行士になるための試験を受ける伊東せりかを演じているんだけど、
宇宙飛行士になりたい理由を語るシーンの顔とか最強最高でしたねぇ。
このシーンだけでも見る価値アリ。
麻生久美子が爽やかな潤いを放つことで、
男の出演者が多く、男臭い映画になりそうなところを阻止している。
そんな感じで麻生ワールドに浸れるのですが、
なんといっても、この映画の主人公は南波六太(ムッタ)と南波日々人(ヒビト)です。
六太と日々人は少年の頃、UFOを目撃して以来、宇宙に憧れを抱き、
共に宇宙飛行士になることを夢見る。
それから19年後。
六太は、上司の物言いに腹が立ち頭突きを食らわし自動車会社をクビになる。
日々人は、NASAの宇宙飛行士として月面へ旅立とうとしていた。
時の人となった弟とは対照的に、次の職場も見つからずうだつの上がらない六太のもとに、
JAXAから宇宙飛行士選抜試験の書類選考通過を知らせる書類が届く。
それは日々人が六太に「夢」を思い出せさせるために、勝手に応募していたものだった。
かくして、六太は宇宙飛行士選抜試験に、
日々人は日本人初となる月面着陸に挑む。
まず、この宇宙兄弟の対比が良い。
前者は熱く、後者は飄々としている。
兄弟の優劣の描き方もきちんとしている。
兄弟は何かと比較されるもの。
どっちが勝りすぎても、どちらかが劣等感に苦しむ。
少年時代の六太が、「兄としては常に一歩先を行かなくてはならない」と語る。
この一言が、あとあとに響いてくる。
でも、兄弟なんだよね。
お互いが助け合っている。
そして、この兄弟を演じた小栗旬と岡田将生の対比も良かった。
2人のことをよく知っているわけではないが、
小栗旬は何事に対しても熱く(同世代の俳優たちと飲みに行くと仕事の話ばかりするらしい)、
方や岡田将生は、3回ぐらいインタビューしたが、
真面目だけどドライな印象を受けたので、ピッタリだ。
逆に言えば意外性がないのかもしれないけど、
原作ものの映画化だから、キャラクターを最低限似せないとね。
六太は試験所、日々人は月面がメインの舞台となり、
遠く離れていて、実は共演シーンがあまりない。
それでもバラバラな感じにならないのは、
2人の役者が演じた兄弟の絆ゆえか?
六太が挑む試験は、『アルマゲドン』の訓練シーンみたいなものではなく、
【閉鎖環境ボックスM-8】という閉鎖環境適応訓練設備に、
他の試験生たちと一緒に閉じ込められ、数日間共同生活を暮らすというもの。
試験のお題も用紙一面ランダムに印字された英字をキーボードで打ち込んでいくなど、
ユニークなものが多い。
ストレスフルな生活環境の中で、
細かい作業させ、宇宙飛行士としての適性能力をみるというもの。
実際にこのような試験が行なわれているのかどうかはわからないが、
なかなか興味深い。
試験を受けている候補生たちの変化にも注目だ。
一方、日々人は、NASAのロケットによって宇宙へと飛び出す。
ロケット発射シーンの映像は、ド迫力。
宇宙空間に辿り着いてからの岡田将生の表情も最高です。
そして、月面シーン。
東宝スタジオに作られたセットで撮影されたらしいんだが、
見事でした。
井上芳雄、塩見三省、濱田岳、新井浩文、
堤真一、吹越満ら上記以外のキャストも良かった。
劇中歌、コールドプレイの「Every Teardrop Is A Waterfall」、
プライマル・スクリーム「Rocks」も効果的。
2時間9分、肩肘張らずに見ることの出来る娯楽作なので、
息抜きやデートにピッタリの映画。
実際に猛烈な疲労困憊状態で見たんだけど、
鑑賞後、少し疲れが取れていました。