『ディヴァイド』
2012年6月9日よりシアターN渋谷ほか全国にて
配給:プレシディオ
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何者かによって爆撃を受けたニューヨーク。
ビルの地下にあるシェルターに逃げ込んだ男女9人。
少ない食料と水、他人との共同生活、そして目的がわからない敵の陰。
彼らは互いに疑心暗鬼を募らせ、心身共に憔悴していく・・・。
閉鎖空間に置かれた複数の人たちがいがみ合い、
やがて秩序が崩壊するという展開は、よくあるパターンだ。
本作もその範疇で、特に目新しさを感じさせない。
いや、この手の他の作品にはない要素もあるにはある。
シチュエーション・スリラーは、「閉鎖空間からいかに出るか?」という
脱出劇的な要素を強く打ち出すことが多いが、本作はそれがそれほどでもない。
壊れていく人間に焦点を当てるために、この要素をあえて排したのかもしれないが、
もうちょっと展開や目的を作って起伏をつけてくれないと、見ている方はやや辛い。
上映時間112分とやや長めだしね。
また、9人たちがシェルターに追いやられるキッカケとなった爆撃が、
いったい誰によるものなのかが、きちんと明かされない。
シェルターに待避したのち、防御服を着た人たちの襲撃を受けるが、
子供を拉致するだけだ。
さっさと大人たちを殺せばいいのに殺さない。
その辺の理由ももったいぶるだけで明確ではない。
あそこまで見せるならもう少し説明があってもいいんじゃない?
監督はつるっパゲのアサシンが暴れまくる『ヒットマン』を撮ったパスカル・ロジェ。
フランス人らしく節々にヨーロピアンな雰囲気が漂う。
映像の色彩とかはジャン=ピエール・ジュネっぽい。
で、スタイリッシュ(死語?)なんだけど、アクションの演出はあんまり上手じゃないね。
戦闘シーンとか何がなんだかわからんかったよ。
そのわからなさを助長させたのが、役者たち。
女子は子供を抜くと2人だから区別は簡単なんだけど、野郎どもは似てるんだよね。顔が。
誰が誰だかよくわからない。
とはいえ、役者たちはみんな素晴らしい。
予算が潤沢にあるとは思えないB級のジャンル映画だけど、
そんなの関係ない!ってぐらい、皆さん力が入ってます。
海外は役者の層が厚いってことを改めて認識しましたね。
そんな役者陣の中で注目なのは、我々の世代としては、やはりマイケル・ビーンでしょう。
『ターミネーター』のカイル・リース。
『エイリアン2』のヒックス伍長。
『アビス』のハイラム・コフィ大尉。
ジェームズ・キャメロン監督のお気に入り俳優として活躍し、
日本でもかなり人気が高かった。
小生もマイケル・ビーンのファンであり、
常に気になる俳優のひとりだった。
そして、それは今でも変わらない。
キャメロン監督作品以外では、
チャーリー・シーンと共演した『ネイビー・シールズ』、
山岳アクション『K2/ハロルドとテイラー』などで主役を張ったり、
マイケル・ベイの『ザ・ロック』にも出演している。
その後は、多くのジャンル映画に出演しているベテラン俳優だ。
『ディヴァイド』では、以前よりシェルターで暮らしていたミッキーを演じている。
独裁者的で、みんなから煙たがられる存在だが、実は全うな人柄で、
ご贔屓俳優ということもあり、9人の中でも特に応援をしてしまった。
もう1人、注目なのがマリリンという母親を演じたロザンナ・アークエット。
80年代の洋画で育った人ならば、ピンッとくる名前でしょう。
マーティン・スコセッシ監督作『アフター・アワーズ』、
リュック・ベッソン監督作『グラン・ブルー』のヒロインを演じた女優さんだ。
ロックファンの間では、
TOTOの大名曲「ロザーナ」のタイトルの由来となった人物として知られている。
90年代もアクション、コメディ、シリアスドラマと幅広く演じ、
2002年には『デブラ・ウィンガーを探して』というドキュメンタリー映画の監督も務めている。
妹は『ロスト・ハイウェイ』のパトリシア・アークエット。
その他の兄弟もみんな俳優だ。
ロザンナ・アークエットは美人だし、出るとこは出ている女優さんだったので、
思春期真っ盛りのジャリは、イチコロでやられましたねぇ。
(マジでエロっくて、コケティッシュで、かわいかったんですよ!)
そんな青春時代の女優さんが、出演しているのは嬉しいんだけど、
今回はなんだか凄い役柄で・・・。
ちょっと複雑な気分になってしまいました。
まぁ、年の割には美を維持しているんだけど、
こんな役をよく受けたなぁ・・・って。
まぁ、逆に言えば、女優魂を感じるんですけどね。
ちゅうことで、マイケル・ビーンとロザンナ・アークエット共演作という点が、
小生にとってはとても重要なポイントでありました。
酒の肴になりますよ。
舞台が限定されている分、もう少しメリハリが欲しいところだが、
役者たちがとても頑張っていて、
風貌や態度の変化の過程を見事に演じている。
「役者で持っている」
そんな感じの映画でした。
さて、先日、マイケル・ビーンのインタビューを「エンタメ〜テレ 最新映画ナビ」に掲載したんですけど、
その中で、「出演者はみんな仲が悪かった」という発言があった。
その事実を知ったうえで『ディヴァイド』見ると、緊迫感が増します。