『シーソー seesaw』
2012年6月30日よりヒューマントラストシネマ渋谷にて
配給:ヴェスヴィアス
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日本語教師の真琴と役者の夢を諦め就職した伸司。
同棲して2年目。
友人が結婚を決めたことで、伸司は真琴との結婚を考え始めるが、
真琴にはまだ結婚の意識がない。
そんな中、真琴に妊娠の兆候が現れ、真琴の生活のバランスが崩れはじめ・・・。
フィルムを使用せず、デジタルで撮影・制作された作品を対象にした映画祭、
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭で2010年に上映され、
今後の長編映画制作に可能性を感じる監督に対して授与されるSKIPシティアワードを受賞した作品。
賞を手にしたのは、完山京洪監督で、脚本とプロデュースも手掛け、
おまけに伸司も演じるというマルチプレイヤー。
『シーソー seesaw』は、インディーズムービーなわけですが、
インディーズの場合、作り手の思い入れが強すぎてマスターベーションに走り、
見る側に“退屈”という名の苦痛を与える作品もあるが、
本作には全くそういうところはない。
友達の結婚に感化されて、そろそろ自分もと考え始める伸司。
結婚したい気もするが、収入的な面と自分の仕事を踏まえると、
まだ時期尚早と結婚話をかわす真琴。
2人の考え方の相違は、
今の日本の若者の結婚に対する不安を象徴しているようだ。
ちょうどこの映画が作られた頃だったと思うのだが、
結婚にメリットを感じない女性が増えているという内容の記事を新聞で読んだ。
ちょっと前までは、女性が結婚を迫り、
まだまだ自由でいたい、責任を負いたくないと、
男性が結婚を拒むケースが多かったように思うのだが・・・
ちゃんと時代を反映している作品だ。
あまりネタバレ的なことは書きたくないのだが、
本作の冒頭にある布石があり、その通りの展開をみせる。
真琴は思いもよらない突然の喪失に直面し、
絶望の日々が綴られる。
物語の前半には、楽しげなホームパーティのシーンがあり、
その分、余計に見ていて辛いんだけど、
ラストシーンには希望があると思う。
それは真琴を通しての完山監督からの若者に向けたメッセージと受け取った。
小生は、この作品に登場する人たちとは世代も違うし、
真琴のような大きな喪失も幸いまだ経験していない。
それでも好感が持てたので、
本作に登場する人たちと同世代だったり、同じような境遇に置かれている人が見たら、
よりいっそう感化させられるのではないでしょうか?
真琴を演じた村上真希は、映画初主演とは思えない演技を披露しているし、
逆光や自然光を利用したライティングも雰囲気がある。
シーソーという遊具の使い方も良い。
様々なメタファーになっている。
その演出はとても映画的。
なによりも完山監督は、ちゃんと映画を理解しいて、“なんちゃって”で作っていない。
SKIPシティアワード受賞ということで、次の新作を期待しております。