『メリダとおそろしの森』
2012年7月21日より全国にて
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
(C)Disney / Pixar All rights reserved.
スコットランドのとある王国。
弓の名手で、おてんばな王女メリダは、愛馬アンガスに乗って森を駆け巡っていた。
しかし、娘の将来を案じた母エリノア王妃が、王家の伝統に則った結婚話を推し進めたため、
常日頃から母親の躾の厳しさに反発心を抱いていたメリダは、城を飛び出してしまう。
森の奥底に迷い込んだメリダは、青く光る不思議な“鬼火”に導かれ、森の魔女と出会う。
「運命を変えたい」と願うメリダに、
魔女はケーキを差し出し、それを母親に食べさせるよう指示をする・・・。
ディズニー/ピクサー史上初となる女性が主人公ということで、
製作陣が選んだテーマは、母と娘。
と書いてしまうとありきたりだけど、、
流石はディズニー/ピクサー、王道路線を巧みにデコレートし、
少女の成長と母親の母性の物語をメリハリのある演出で描き切っている。
もはやお家芸と化した伏線の張り方もスマート。
がんじがらめの生活に嫌気が差し、その反抗心が母親に向かうメリダが、
その場の感情に流されて、大きな過ちを犯し、結果的に母親の大切さ、偉大さを改めて学ぶ。
一方、母親は、娘の愚行を責めず(混乱状態で責められるような状態じゃないんだけどね)、
窮地に陥る娘を必死に守り、
また、触れ合うことで、娘の心情を理解するようになる。
単純なんだけど、この過程の描き方が本当に上手い。
しかもあまりセリフに頼らない。
特に印象的なのが、2人が川で魚を捕るシーン。
このシーン、大好きですね。
一気に双方に感情移入させられた。
で、この後、ドン!と落として、今後の暗示させる
この緩急の付け方とか、上手いなぁ〜。
これって、セオリー通りなのかもしれないが、
それさえも放棄してしまう映画はたくさんある。
本作を鑑賞した後、『スノーホワイト』を見たんだけど、
ストーリーの組み立てがあまりに下手で…。
改めて、『メリダとおそろしの森』はちゃんと段階を踏み、
ラストに集約させていっているんだなぁ〜って。
確か、『モンスターズ・インク』のDVD特典だったと思うんだが(かなりあやふや)、
ピクサーは、まず絵コンテみたいなラフな絵を書き、
他のスタッフの前で紙芝居風にしてストーリーを披露し、
みんなの反応を見ながら、物語を作っていくという作業工程をみた。
物語を披露するスタッフも芝居をつけ、面白おかしく伝え、
聞き手となるスタッフも本当の観客のように振舞う。
スタッフ一同が楽しみながら物語を作っているのがわかる一コマだった。
『メリダとおそろしの森』が同じ手法をとっているのかは分からないが、
いつものように練りに練ったに違いない。
優れたストーリーテリングはピクサーの強みだ。
ピクサーの強みといえば、ビジュアルも挙げられるが、今回も言うまでもなく素晴らしい。
毎回、新たな技術を作品に取り入れているが、
今回は、メリダのトレードマークであるボサボサの赤毛の表現にチャレンジしている。
そのメリダは、パッと見たときは、あんまり可愛いくないと感じたんだが、
映画を見ると、あら不思議、五分後にはその愛くるしい表情の虜に!
キャラクターの造形もピクサーの十八番。
メリダ以外も、三人の弟や、三人の結婚候補者など、いい味出してます。
『Mr.インクレディブル』以降、『トイ・ストーリー3』以外、
面白いんだけど、ちょっと物足りなさを感じていたピクサー作品。
今回も苦手なフェアリーテイルものということもあって、
見る前は、「どうだなかなぁ〜」と思っていたんだが、
久しぶりに、頭からお尻まで存分に楽しめました。
感動したし、見終わった後、ちょっとした高揚感も得られた。
老若男女を問わず楽しめる作品ですが、
特に思春期の女の子や娘を持つ母親に見てもらいたい一本。
できれば一緒にね。