『ダークナイト ライジング』
2012年7月28日より丸の内ピカデリーほか全国にて
※7月27日先行上映あり
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2012 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC
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ダークナイト(=バットマン)が夜の闇に消え、
一瞬にしてヒーローから逃亡者へとなってしまったあの日から8年。
ゴッサム・シティに覆面テロリスト、ベインが出現し、ゴッサムは再び恐怖のどん底へ。
隠居生活送っていたブルース・ウェインは、
再びケープとマスクを身にまとい、ベインを倒すべく立ち上がるが・・・。
まさに待望という言葉が相応しい、待ちに待った三部作の最終章。
結論から言ってしまうと、残念ながら『ダークナイト』ほどの衝撃というか、
震えるぐらいの感動はなかった。
もう少しそこはじっくりと描写した方がいいんじゃない?というような演出もあったし、
そのタイミングでバットマン登場ですか?とか、
どうやって、ブルース・ウェインはここに来たの?とか、
ご都合主義的な展開もあった。
(まぁ、ヒーローものは、神出鬼没で良いという割切りもあるが・・・)
あと、表現が難しいんだけど、『ダークナイト』の時にあった、
ゴッサム・シティの人たちと共有できる要素が、今回あまりないんだよね。
対岸の火事というような感じで、そこまで感情移入できなかった。
しかし、だからといって『ダークナイト ライジング』がダメだったかというと、
そんなことは全く無く、素晴らしい作品であることは間違いない。
165分という長丁場を全くダレることなく、
高いテンションを保ったまま、一気に見せ切る。
これは凄いことだ。
ブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)を筆頭に、
執事のアルフレッド(マイケル・ケイン)、ゴードン市警本部長(ゲイリー・オールドマン)、
といったレギュラーメンバーは、それぞれ悩みを抱え葛藤する。
流石に3作目になるとキャラクターに愛着も沸いてくるので、その苦悩が心に染みる。
(特にアルフレッド・・・切ねぇ・・・)
敵か味方か分からないキャット・ウーマン/セリーナ・カイル(アン・ハサウェイ)、
ブルースに協力する大富豪のミランダ・テイト(マリオン・コティアール)、
正義感の強い警官ジョン・ブレイク(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)等、
新メンバーも作品に新たな息吹を持ち込んでいるし、
全員、大きな存在意義があり、見せ場もたっぷりある。
そして、前作のジョーカーに変わる宿敵となるのがベイン(トム・ハーディ)だ。
初めてそのビジュアルを見たときに、
そっくりなビッグ・バン・ベイダーを見慣れていたせいか、
あまりパッとしない感じがしたんだが、
本編を見ると強烈な存在感を発揮している。
ジョーカーが知能犯的な存在だったのに対して、
ベインはいかにも強そうな凶悪犯という風貌だが、
見た目どおり、とにかく強い。
あまり武器とかに頼らず、自分の肉体で勝負している点に男の美学を感じるね。
バットマンは、たまに楠木正成みたいに、姑息な手段を用いて戦うことがあるが、
それを取っ払って、ガチンコ勝負させたら確実にベインの方が強いでしょう。
更にベインは、頭もいい。
こんな相手にバットマンは、どう立ち向かうのか?
どうやって勝つのか?
この手のヒーローものは、敵が強ければ強いほど良い。
しかも、まるで黒澤明の『用心棒』のように、
ブルース・ウェインを一旦、ボロボロにしてしまうのだ。
こんな状態で戦えるのか?
逆境の中、強敵にいかにして勝つか?
当然、その方法は最後の方まで明らかにならないことなので、見ていて楽しい。
クリストファー・ノーラン監督は、ちゃんとツボを抑えているね。
これ以外にも、キャットウーマンとバットマンの関係とか、
ベインの過去とか、あれとか、これとか・・・、
あまり語るとネタバレになるので詳しくは触れないが、
とにかくそれぞれのキャラクターの物語が、本筋にしっかりと結びついていて、
作品に奥行きを与えている。
あとは、いつもながらカラフルな色彩を抑えた映像が美しく、力強い。
崇高で重厚感がある。
唯一、キャットウーマンにだけポイントで鮮明な色を使っているのも心憎い。
これまた毎度だが、メカのデザインもクールでステキだ。
この世界観に165分間も浸っていられるだけでも幸せだ。
そして、今回何よりも響いたのが、ハンス・ジマーによるスコア。
このスコア無くして『ダークナイト ライジング』は有り得ない。
メリハリの効いたスコアなんだけど、
ここぞというクライマックスの盛り上げ方は、素晴らしい。
特にラスト5分。
映像の展開と音楽の展開が見事にマッチングしている。
ここはかなり高揚した。
他にも語るべき点は多々あるが、百聞は一見にしかず。
とにかく少しでも本作に興味があるのならば、迷わず“劇場で”見て欲しい。
もちろん、『ダークナイト ライジング』単体でも十分楽しめるが、
出来ることならば、過去2作を見ておいた方が良い。
(当たり前の話だが・・・)
『バットマン ビギンズ』は、ずいぶん前に1度だけしか見ておらず、
記憶を呼び覚ますのにかなり苦労しました・・・。