『夢売るふたり』
2012年9月8日より新宿ピカデリーほか全国にて
配給:アスミック・エース
©2012「夢売るふたり」製作委員会
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東京の片隅で小料理屋を営んでいた貫也と妻の里子は、
火事で全てを失ってしまう。
再び店を開くための資金を稼ぐため、里子が考え出したのは結婚詐欺。
里子の計画のもと、貫也は出版社OL、デリヘル嬢などに言葉巧みに次々と接近していくが・・・。
『蛇イチゴ』、『ゆれる』、『ディア・ドクター』と秀作を立て続けに手掛けきた西川美和監督長編第4弾。
前3作同様、人間の白黒つけられないグレーな部分を描いているんだが、
そのグレーの濃度は増し、ますます白と黒の見分けが付かなくなっている。
男の心理、女の心理。
夫婦の関係。
男女の関係。
個々の人間、そして、人間同士の関係、全てにグレーの要素がある。
今までの作品は男性が主人公だったが、
今回は、初めて女性の視点を取り入れ、バリーエーションを増やしながら、
過去3作で描いてきた人間の危うさ、曖昧さとは全く違う部分を浮き彫りにしている点が凄い。
毎度のことながら、西川美和監督の頭の中は一体どうなっているのだ?と思ってしまう。ちゅうか、怖いですね。
そんな西川美和監督の作品は、セリフがとても良かったりするんだが、
セリフに頼らない映画ならではの演出にも長けている。
今回もセリフ劇の部分と、
セリフを排して、絵だけで何かを伝える部分を織り交ぜて、
メリハリをつけているんだが、特にセリフのないシーンは印象的。
里子が無言で札束に火を点けるシーン。
里子が自慰に耽るシーン。
里子がコップをつかんで振りかざすシーン。
里子がある小動物と対面するシーン。
そして、ラストシーン。
中でも里子と小動物との対面は、里子の心理に大きく影響を与える重要なシーンだ。
こういうショットを思いつくってのがねぇ・・・。
凡人にはないよねぇ・・・。
過去3作を踏襲しつつも、意欲作であり、更なる進化を遂げている点からして、
西川美和の最高傑作じゃないのかな?
しかしながら、一番、苦手・・・。
着眼点は良いし、演出もうまいし、松たか子の演技は最強に素晴らしい。
しかしながら、うま過ぎるのだ。
例えていうならば、アブラが乗りすぎちゃった和牛みたいな感じ。
美味いんだけど、あんまり量は食べられない。
(そういう年齢になってきました・・・)
そして、女性の視点を入れたことにより、
ワシとしては「見てはいけない、見たくない部分」を露にされてしまった気がしましてね・・・。
やっぱり女性は逞しいなぁ〜。
それに比べて、男って・・・。
本当はわかっているんだけど、決して認めたくない。
これも男の悲しき性か・・・。
それにしても、西川美和監督の才能は凄い・・・。