2012年09月07日更新

#676 『夢売るふたり』

夢売るふたり


『夢売るふたり』
2012年9月8日より新宿ピカデリーほか全国にて
配給:アスミック・エース
©2012「夢売るふたり」製作委員会


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東京の片隅で小料理屋を営んでいた貫也と妻の里子は、
火事で全てを失ってしまう。


再び店を開くための資金を稼ぐため、里子が考え出したのは結婚詐欺。


里子の計画のもと、貫也は出版社OL、デリヘル嬢などに言葉巧みに次々と接近していくが・・・。


yumeuabe.jpg


『蛇イチゴ』、『ゆれる』『ディア・ドクター』と秀作を立て続けに手掛けきた西川美和監督長編第4弾。


前3作同様、人間の白黒つけられないグレーな部分を描いているんだが、
そのグレーの濃度は増し、ますます白と黒の見分けが付かなくなっている。


男の心理、女の心理。
夫婦の関係。
男女の関係。


個々の人間、そして、人間同士の関係、全てにグレーの要素がある。


今までの作品は男性が主人公だったが、
今回は、初めて女性の視点を取り入れ、バリーエーションを増やしながら、
過去3作で描いてきた人間の危うさ、曖昧さとは全く違う部分を浮き彫りにしている点が凄い。


毎度のことながら、西川美和監督の頭の中は一体どうなっているのだ?と思ってしまう。ちゅうか、怖いですね。


yumeuabezitensya.jpg


そんな西川美和監督の作品は、セリフがとても良かったりするんだが、
セリフに頼らない映画ならではの演出にも長けている。


今回もセリフ劇の部分と、
セリフを排して、絵だけで何かを伝える部分を織り交ぜて、
メリハリをつけているんだが、特にセリフのないシーンは印象的。


里子が無言で札束に火を点けるシーン。
里子が自慰に耽るシーン。
里子がコップをつかんで振りかざすシーン。
里子がある小動物と対面するシーン。
そして、ラストシーン。


中でも里子と小動物との対面は、里子の心理に大きく影響を与える重要なシーンだ。


こういうショットを思いつくってのがねぇ・・・。
凡人にはないよねぇ・・・。


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過去3作を踏襲しつつも、意欲作であり、更なる進化を遂げている点からして、
西川美和の最高傑作じゃないのかな?


しかしながら、一番、苦手・・・。


着眼点は良いし、演出もうまいし、松たか子の演技は最強に素晴らしい。


しかしながら、うま過ぎるのだ。


例えていうならば、アブラが乗りすぎちゃった和牛みたいな感じ。


美味いんだけど、あんまり量は食べられない。
(そういう年齢になってきました・・・)


yumeuabematu.jpg


そして、女性の視点を入れたことにより、
ワシとしては「見てはいけない、見たくない部分」を露にされてしまった気がしましてね・・・。


やっぱり女性は逞しいなぁ〜。


それに比べて、男って・・・。


本当はわかっているんだけど、決して認めたくない。
これも男の悲しき性か・・・。


それにしても、西川美和監督の才能は凄い・・・。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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