『白雪姫と鏡の女王』
2012年9月14日より丸の内ルーブルほか全国にて
配給:ギャガ
©2011 Relativity Media, LLC. All Rights Reserved.
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18歳の白雪姫は、幼い頃に父親である国王が亡くなって以来、
継母の女王によって城に閉じ込められていた。
女王の浪費によって、王国は破産寸前。
女王は金持ちでハンサムな他の王国の王子と結婚することで、
富も愛も手に入れようとする。
しかし、たまたま白雪姫と王子が出会い、2人は恋に落ちてしまう。
怒った女王は白雪姫の殺害を命じるが…。
とにもかくにも印象に残るのは「眉毛」です。
これは本作の宣伝スタッフを含め、知り合いのライターさんとかが、
全員一致で指摘している点です。
白雪姫演じるリリー・コリンズが登場するファーストショットで、
「なんじゃこの眉毛は!!!」とたまげる。
スクリーンにデカデカと映し出される白雪姫のゴン太眉毛。
強烈なインパクトでした。
両津勘吉はアニメだが、リリー・コリンズは、リアルな人間だ。
ヒロインムービーで一番重要なのは、ヒロインです。
正直、まるでダメなタイプで、こやつと1時間46分も付き合うのか・・・と絶望。
しかしながら、物語が進むにつれ、
リリー・コリンズがとても魅力的に見えてくるから不思議だ。
とはいえ、やっぱり強烈な眉毛だ。
普通、眉毛が太かったら抜いて細くするとかしそうなもんだが、
リリー・コリンズは極太眉毛を押し通す。
偉いと言えば偉い。
だって、眉毛とはいえ親からの授かりモノですからね。
で、親といえば、リリー・コリンズの父親が誰であるかを知って、
そうとうぶったまげた。
なんと、ジェネシスのフィル・コリンズだと!
ジェネシスの「インビジブル・タッチ」は、かつてノエビア化粧品のCMに使用されていて、
「ゴールデン洋画劇場」か「日曜洋画劇場」のどちらかで、バンバンかかっていた。
我々の世代では、この「インビジブル・タッチ」から洋楽に入った人も少なくないはず。
この事実を知ったのは、鑑賞がずいぶん経ってから。
いやー驚いた。
どうやら禿げチャビンのお父さんの男性ホルモンは、
娘の眉毛にかなり遺伝したらしい。
(男性ホルモンが強いと毛深くなるが、頭髪が薄くなる傾向がある。衣笠、掛布など…)
いやいや、それだけじゃなくて、歌の上手さもちゃんと遺伝していました。
エンドロールがインドカレー店のモニターでちょいちょいかかっているPVみたいになっていて、
リリー・コリンズがインド風の節回しで美声を聴かせてくれる。
このエンドロールは、本編よりも素晴らしいといっても過言ではない。
おっと・・・本音が出てしまいました。
本作の監督は、『ザ・セル』、『インモータルズ−神々の戦い−』のターセム・シン監督。
今までの様な硬派な作品ではないということは、
なんとなく試写状とかの宣材物を見て分かってはいたが、
こうまで今までのターセムと違うとすんなりと馴染めない。
悪ノリぎりぎりラインのユーモアが満載。
彼が描き出す不気味なビジュアルには、
軽妙さとかユーモアとかコメディとか似合わないと思う。
メルヘンにならない。
女王が鏡の部屋に行くときのシーンとか、
これぞターセムって感じなんだけど、この作品に限っては逆に浮いちゃう。
ターセムは、どちらかというと「本当は怖いグリム童話」の方があっている。
こういうユーモラスなファンタジー路線だったら、テリー・ギリアムの方がはまるね。
先ほどぎりぎりのラインのユーモアと書きましたが、
悪役初挑戦となる老いに怯えるジュリア・ロバーツも、まだまだ綺麗だから成立してはいるが、
やっぱり「鏡よ鏡」の役柄はリアルでちょっと痛い。
自虐ギャグをやるにはまだ早い女優さんだと思うのです。
物語も単純明快なんだけど、森に住む怪物の描写があまり足りないので、
ラストがイマイチ盛り上がらない。
オチがすぐに分かってしまうので、わざと焦点を当てなかったのかもしれないが、
怪物の話が放置されているのはもったいない。
重要である白雪姫と王子の恋愛模様も、なんだか慌しいというか…馬鹿馬鹿しいというか…。
ということで、マイナスポイントだらけの映画ですが、
本作は女性の評判がすこぶる良い。
チャーミングで、可愛らしくて、キラキラしていて、ファンタジックなところが受けているのでしょう。
男子諸君は、日常生活で、女子の「これ、かわいぃぃ!!!!」
という意見に賛同できないことがあったりするでしょ?(例えば、洋服とか)
女子の言っていることはなんとなくわかるんだけど、
まるっきりそうだとは思えない。
別に凄く可愛いとも思わないけど、かといって、可愛くないとも思わない。
言い方はちょっと悪いのですが、つまりどーでもいいってヤツですね。
そもそも興味が無いし、理解も出来ない。
多分、『白雪姫と鏡の女王』は、それに近い映画なんじゃないかと思います。