『セックスの向こう側〜AV男優という生き方』
2013年2月23日よりアップリンク(レイト)ほか全国にて順次公開
配給:マクザム
©MAXAM Inc.
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2012年、生誕30周年をむかえたアダルトビデオ=AV。
ピンク映画から派生し、低予算のビデオ撮りという形でひっそりと生まれたAVは、
スター女優を生みながら、現在ではメーカー数100社以上、月間販売タイトル推定4,500本、
業界年間売上約550億円の巨大市場へと成長を遂げた。
本作は、今や市民権を得たとも言えるAVを支えてきた“AV男優”たちに焦点を当てたドキュメンタリー映画。
現在、推定10,000人とも言われる現役AV女優に対し、男優は約70人しかいないという。
本作に登場するAV男優は、AV黎明期から活躍しているベテランから中堅まで20名程度で、
それぞれが仕事について、性について、女性観について、赤裸々にコメントしている。
印象的なのは、ほとんどの男優たちが楽しみながら、
それぞれのプライド、ポリシーを持って仕事に挑んでいること。
どんな仕事でもそうだけど、とても大切なことだと思う。
これがブレると多分、いい仕事は出来ない。
また、彼らの発言から今の撮影現場の過酷な環境が窺い知れる。
60分程度の収録が主だったビデオから、長時間収録が可能なDVDに移行したことによって、
おのずと撮影時間も延びた。
男優の数が少ないので、1日に現場をハシゴするケースもあり、
かなりハードな状況になっている。
男ならわかると思うが、セックスはかなり体力を消耗する。
なんかの本で読んだけど、2キロだか5キロぐらい走るのと同じぐらいの運動量になるとか・・・。
体力的のもそうだが、ぶっちゃけ、連荘だとチ○チ○が痛くなったりする。
なので、ハシゴは普通に「すごいなぁ〜」と。
そんな強靭な“仕事道具”を持つ彼らは、事務所に所属しておらず、
マネージャーもいないので、スケジュール管理はすべて自分。
営業も兼ねなきゃいけないわけで、これもなかなか大変だ。
撮影現場が過酷になると、共演する女優さんとの交流も以前に比べて激減。
カラミの間の休憩時間にちょっと会話を交わすだけという時もあるという。
そんな中で、愛し合っているシーンやレイプするシーンなど、
様々なシチュエーションに応じて演技をしなくてはならない。
撮影時間が長くなり、カラミが多くなると女優さんの方も体力を酷使しているケースがあり、
その際には、傷つけないようにとか、いろいろと気を遣うこともあるようだ。
精神的にも大変な仕事だと思った。
あと、AV男優たちのプライベートでのセックスについて語るくだりと、
この仕事についたきっかけが面白い。
当然だが、みんな入り口は違うし、セックスに対する考え方も異なる。
AVを全く見たことがないといったら嘘になるから言うが、
自分はあまりAV男優を意識して見たことはない。
顔と名前が一致するのはごく少数。
それこそ超有名な加藤鷹、チョコボール向井ぐらい。
しみけんとか吉村卓とか、本作で初めて名前を知った。
そんな程度なんだが、
それぞれのバックグランドやセックスに対する理念を知った上で、
彼らが出演しているAVを見れば、
きっと今までとは違う観点で見ることが出来るに違いないと思った。
・・・って、見るのかい!?
なにはともあれ、本作のお陰で多くのAV男優を知るに至ったわけですが、
以前より、一人だけなんとなく気になるAV男優さんがいた。
それは平本一穂氏。
現在、自身のレーベルを立ち上げ社長兼監督としても活躍中
確か2003年ぐらいだったと思うんだが、テレビ番組の制作を担当していた頃、
AV女優の方に出演してもらい、映画を語ってもらうという番組を作ったことがある。
その時のAV女優は、吉沢明歩と常盤桜子だった。
吉沢明歩は、10年経っても現役バリバリのトップ女優として君臨している。
対する常盤桜子は、いつの間にやら引退していた。
そんな2人のインタビュアーを務めてもらったのが、平本一穂氏だった。
AV男優=未知の職業であり、果たしてどんな人なんだろう!?と戦々恐々としていたんだが、
打ち合わせ場所の阿佐ヶ谷の喫茶店に現れた平本氏は、温厚で、優しい感じの人柄だった。
今回、その平本氏も出演しており、当時と変わらず“穏やかに”AVについて力説しつつ、
「潮吹き」と呼ばれる現象のメカニズムについて、判りやすく説明してくれたりもする。
これは「へぇ〜、そうなんだなぁ〜」と勉強になりました。
あと、特に本作でウケたのが、「女性とは?」という質問に対するAV男優たちの答え。
現場で気を遣いながらも、4桁という豊富な女性経験を持つ彼らでも、
同じような意見を持っているんだなと。
なんだか知らないけど、ちょっと安心している自分がいました。
なんとなくAVの撮影現場を想像することは出来るが、
やはり遠い世界だし、今後も近くになることはないでしょう。
知らないけど、興味がある世界。
だからこそドキュメンタリーとしての面白さが本作にはあった。
AV男優の了見を知ることが出来る、なかなか粋な作品でした。