2013年04月18日更新

#696 『映画クレヨンしんちゃん バカうまっ! B級グルメサバイバル!!』

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『映画クレヨンしんちゃん バカうまっ! B級グルメサバイバル!!』
2013年4月20日より全国にて
配給:東宝
©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2013


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春日部で開催されているB級グルメカーニバルに行くことになったしんのすけとカスカベ防衛隊。


途中、謎の美女からとあるソースを託される。
カーニバル会場にいる焼きそば職人ソースの健に届けて欲しいというのだ。


気軽に依頼を引き受けたしんのすけたちだったが、
なんとそのソースは、B級グルメ撲滅を目論むA級グルメ機構の魔の手から、
B級グルメを救える唯一の存在、“伝説のソース”だった。


ソースを狙うA級グルメ機構たちから妨害を受け、
山奥へと迷い込んでしまったカスカベ防衛隊一行。


果たして、しんのすけたちは、無事にソースを届け、
庶民の“ささやかな幸せ”を守ることができるのか?


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劇場版「クレヨンしんちゃん」第21弾。


監督は前々作、前作を手掛けた増井壮一から、
『レイトン教授と永遠の歌姫』などを手掛けてきた橋本昌和にスイッチ。


これが功を奏したか、増井壮一監督には申し訳ないが、
前の2本よりも数段出来の良い作品に仕上がっていた。


『バカうまっ! B級グルメサバイバル!!』の主役は、
しんのすけ、風間くん、ネネちゃん、マサオくん、ボーちゃんが結成したカスカベ防衛隊。
プラス、シロ。


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カスカベ防衛隊がメインを張るのは、『嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』(04)以来、実に9年ぶり。


この『嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』は、中盤まったりしていてそんなに面白くないんだけど、
今回は、カスカベ防衛隊の各キャラクターの持ち味を十二分に活かしながら、
全編を通して、テンポ良く大活躍させている。


単に活躍させるだけでなく、仲違いがあったりするのも楽しい。


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当然、カスカベ防衛隊が前面に出ているので、
ひろし、みさえ、ひまわりの出番は少ないんだが、
要所でひろしとみさえがお決まりの活躍をしてくれる。


それから全体的にギャグのボリュームが多くなっている。
何度も書いているが、「クレヨンしんちゃん」の大きな魅力はギャグだ。


ギャグ無くして「クレヨンしんちゃん」は成立しない。


泣けることで有名な名作『嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』は、
ギャグの量が少ないと思われがちだけど、ちゃんとギャグが散りばめられている。


前作『オラと宇宙のプリンセス』は、圧倒的にギャグが少なかった。
ギャグよりもおっかないところがたくさんあり、
一緒に見ていた会場の子供たちは、泣いていた。


いつもどおり一般試写会で子供たちにまみれて『B級グルメ』を鑑賞したんだけど、
場内、泣く子はひとりもおらず、笑い声が響き渡っていた。


なぜ笑えるかというと、やっぱり各キャラクターが持っているギャグを
しっかりと押さえているからでしょう。


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しんのすけの下ネタ。


風間くんの優等生ぶっているけど、実は抜けているところ。
それを茶化すしんのすけ。


怒るとうさぎの人形を取り出して、殴りだすネネちゃん。


すぐ泣くくせにしたたか。
でも結局失敗して、やっぱり涙を流すマサオくん。


冷静沈着で、鋭い発言をするけど、どう見ても一風変わっているボーちゃんの存在。


一番、常識があるのに、なぜかいつも損な役回りになってしまうシロ。


足が臭いひろし。


おっちょこちょいなみさえ。


今回、ひまわりのギャグの貢献度は少ないんだけど、
主要キャラクターが定番ギャグで大いに笑わせてくれる。


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「クレヨンしんちゃん」の場合、ギャグに関しては、マンネリでいいんですよ。
みんなそれを求めて見に来ているんだから。


コンサートに行った際、そのアーティストが代表曲を演奏してくれなかったらガッカリですよね?
例えば、イーグルスを見に行って「ホテル・カリフォルニア」をやらないとか、
メタリカが「バッテリー」やらないとかね。


今度の小橋健太の引退試合で、小橋のチョップやラリアットが見られなかったら、どう思います?
今の小橋の体調で可能かどうかはわからないが、
できればムーンサルトプレスやバーニングハンマーも見たいはず。


桃月庵白酒や春風亭一之輔の落語を見に行って、
全く笑えなかったら、落胆を通り越して怒りますよ。


コンサートにしても、プロレスの試合にしても、落語にしても、
お客さんは何かを期待して見に行っている。


期待に応える側は、如何に持ち曲、持ち技、持ちネタを出して、
お客さんに満足してもらえるかを考えるわけです。


「クレヨンしんちゃん」も同じ。


劇場版「クレヨンしんちゃん」には、21年の歴史がある。
アニメ界のベテランだ。


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1993年から続いています!


“持ちギャグ”という財産が潤沢にある。
それを使わない手はないし、ファンもその財産があることを熟知している。


最低限の新鮮味を出すために、舞台・時代設定や物語を毎回変える必要はあるが、
設定に合わせて、お決まりのギャグをぶち込めば、
とりあえず、お客さんは満足するんじゃないかな。
(もちろん、それだけじゃダメだけど)


前作『オラと宇宙のプリンセス』の記事を読み返すと、
僭越ながらいろいろと苦言を呈しつつ、ギャグの復活を要望していた。


『B級グルメ』では、その要望がかなり反映されていた。
まさか、製作陣、私のブログ読んだ?


それはさておき、ギャグが盛り込まれていて良かったのですが、
『B級グルメ』は他にも特筆すべき点がいくつかある。


このところの劇場版「クレヨンしんちゃん」は、ちょっと雑な印象を持っていたんだけど、
今回は伏線がたくさん引かれていて、脚本を練った感が伝わってきた。


ちょっと取って付けたような伏線もあるけど、
こういう細部へのこだわりは、大切だと思う。


上映終了後、観客のひとりが、
「伏線がたくさん貼られていて良かった」と言っていたのをたまたま耳にした。


それからゲスト声優。


劇場版「クレヨンしんちゃん」には毎回ゲスト声優が登場するが、
『嵐を呼ぶ 歌う ケツだけ爆弾!』の戸田恵子は別として、
今ままでこのブログではあまり取り上げてこなかった。


あくまでもゲストなので、語るほどでもないかなと。


しかし、『B級グルメ』のゲスト声優は、楽しめた。


まず、しょうがの紅子という重要なキャラクターを演じている渡辺直美。
本人の容姿を想像すると萎えるが、声だけ聴くとすごく色っぽいし、上手いと思った。


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続いて、下町コロッケどん役のコロッケ。
コロッケがやっているということを事前に知らないと、
コロッケが声を当てていることがわからないほど、いつもとは違う声を出している。
(なら、コロッケがやる必要ないのでは?と思わんでもないが、芸達者であることがわかる)


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もう一人、川越シェフ。
これは声云々ではなくて、ゲストとは思えないような扱われ方が最高でした。
これでいいのか?川越シェフ!?


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そして、悪役たちのキャラクターが良かった。


攻撃力ゼロに等しく、そこはかとなく哀愁漂うA級グルメ機構のボス、グルメッポーイを筆頭に、
マヨネーズが大嫌いなキャビア、常に前向き一直線の横綱フォアグラ錦、
気持ち悪すぎるトリュフなど、個性的な悪役たちがしっかりと笑いを取ってくれる。


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あと、『B級グルメ』というだけあって、食べ物が印象的に登場する。


特に“焼きそば”。


見れば、間違いなく焼くそばが食いたくなります。


ギャグあり、ストーリーよし、キャラクターよし、
笑えて、楽しめて、食べ物の大切さを改めて痛感させてくれる作品になっていて、
最初から最後まで、飽きることなく見ることができました。


「クレしん」ファンはもちろんのこと、老若男女を問わずオススメできる一本です。


因みに、本作を鑑賞した日の夕飯は、焼きそばでした。


劇中、焼きそばに生卵をかけるシーンがある。
今まで目玉焼きを乗せたことはあったが、生卵はやったことがない。


もちろん、試しましたよ。


生卵に炭水化物の組合せ。
鉄板でした。


お腹を空かせた状態で見ると良いかもしれません。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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