『オブリビオン』
2013年5月31日よりTOHOシネマズ日劇ほか全国にて
配給:東宝東和
公式サイト:http://oblivion-movie.jp/
©2013 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
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2017年、地球はエイリアンの攻撃受け、勝ちはしたものの壊滅した。
生き残った人類は、他の惑星へと移住した。
2077年、ジャックは妻のヴィクトリアと地球に残り、
日々、パトロールをして地球を監視していた。
任務完了まであと2週間と迫った日、事件が起こる・・・。
崩壊した地球を舞台にしたトム・クルーズ、オルガ・キュレリンコ、
モーガン・フリーマン共演のSF映画ということ以外、
ほとんど情報を得ないで見たのですが、それが功を奏しました。
少しでも本作に興味を持ち、見てみたいと思ったら、
ストーリーとか読まないほうが良いです。
チラシとかに書いてあるストーリーも、
物語の半分ぐらい語っちゃっているので要注意。
(故に上記のストーリーは超簡潔にしておきました)
何も知らないまま、『オブリビオン』の世界に飛び込んだ方が、
面白さ倍増のはずです。
ただ、いきなりなんでこんな地球になったかがモノローグで語られ、
その中に『オブリビオン』の世界にのみ登場する固有名詞が出てくるので、
そこは若干戸惑った。
なので、少しだけ、その辺を紹介しておきます。
■スカイタワー
1000m上空にそびえたつ建物。
ジャックとヴィクトリアの快適な住まいであり、
任務を遂行する際の拠点となるステーションでもある。
■バトルシップ
ジャックが操縦するパトロール機。
■ドローン
地球を縦横無尽に飛び回り、監視し、時に攻撃をする無人偵察機。
ジャックは、度々壊れる(壊される)ドローンの修理を担っている。
■スカヴ
地球を攻撃するも人類に敗れたエイリアン。
地球に残党がいて、ドローンを破壊するなど、ジャックの任務を妨げる。
■タイタン
土星最大の衛星。
人類の移住先。
■テット(テトだったかも・・・)
衛星タイタンに建設した宇宙ステーションで、人類の住まい。
ヴィクトリアは、ここでの暮らしを夢見ている。
これらの用語を把握しておけば、きっと『オブリビオン』の物語に没頭できるでしょう。
続いて、ネタバレにならない程度に本作の魅力を綴ろうと思います。
まず、CGと実写を見事に融合させて描いた世界観が素晴らしい。
これはCGなのか?
実写なのか?
解像度の高いカメラを使用して撮影されたそうで、
とんでもない映像美だった。
全壊の地球ということで、世紀末感が漂いそうだが、
逆に美しくて、神秘的で、自然の雄大さを感じる魅力的な世界になっている。
なんだか『コヤニスカッティ』を思い出す。
本作の重要な舞台であるスカイタワーの背景は、ブルースクリーンだと思っていたら、
なんとガラス張りのセットの周りにスクリーンを張って、
ハワイのハレヤカラ火山の山頂で撮影した空の映像を投影して撮影したとのこと。
こういう発想がすごい。
この他にもどうやって撮影したんだろう?と思うようなシーンがいくつかあり、
久しぶりにこの手の映画でメイキングを見てみたいと思った。
また、この独特の世界観を形成するのに一役買っているのが、
先に上げたスカイタワーやドローン、バトルシップの造形。
スカイタワーのデザインは、優美でモダンな作り。
ドローンやバトルシップは、ロボット的な動きをするし、機能的。
監督のジョセフ・コシンスキーは、スタンフォード大学工学部機械工学デザイン科卒業、
コロンビア大学建築大学院の修士課程修了というキャリアの持ち主。
どおりで、SF映画でありながら、スカイタワーや乗り物とかが現実的なわけだ。
現実的といえば、今回、トム・クルーズら役者たちが、絵空事に現実味を与えている。
トム・クルーズといえば、“俺様トム様”なわけで、今回も“俺様トム様”なのですが、
『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』や『アウトロー』に比べると、
それほどナルナルしていない。
機密保持のために5年前に記憶を消去され、
悩み、苦しみながらも地球を愛するジャックを自然体で演じている。
いつもだったら、「どーだー!俺ってすげぇーだろぉー」ってなるはずなのに、
それをかなり押さえ込んでいる。
それからヒロインを演じたオルガ・キュレリンコもよかったぁ。
彼女が演じたジュリアについては、あまり書きたくないんだけど、
完璧なキャスティングとはこういうことを言うんだと思った。
『007/慰めの報酬』の時もそうだったように、
どこか儚げなんだけど、芯の強い女性を演じると上手い。
悲壮感漂わせまくりなんだけど、時折見せる笑顔が素敵ザンス。
また、タンクトップ姿になってくれるので、そこも良いっす。
でもって、この映画の最大の魅力は、物語とテーマ。
先述の通り、物語はなんも知らないで見たほうが良いので書かないが、
序盤はとにかく何が起こるのかよくわからない。
それが楽しい。
中盤から終盤に掛けては、先が読めそうで、読めない展開。
(読む必要もないんだけどね)
そして、テーマ。
単なるスリリングで、アクション満載のSF映画ではない。
人生を考えさせられた。
愛する人や信頼の置ける人と、
何かを共有できる時間を持つことの大切さ。
日常生活では、当たり前のように過ぎていく出来事が、
とてもとても貴重であり、尊いものであることを改めて学ばせてもらった。
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』を見た時に感じたのと同じような感情が、湧き上がってきた。
「ケンカもして、一緒に年をとって、そして太る」というセリフが、超好きです。
独創的な世界観、ビジュアル、アート、捻りのある物語。
役者も良くって、映像も美しく、音楽、劇中音の使い方も上手い。
(あの往年の名バラードがかかるシーンで、思わず泣きそうになった)
ラブストーリーであり、社会派であり、
また個々の懐にスッと落ちてくる身近な人間ドラマでもある。
「オブリビオン」は、「忘却」の意なんですが、
タイトルに反して、忘れがたい作品でした。