2013年05月30日更新

#704 『はじまりのみち』

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『はじまりのみち』
2013年6月1日より全国にて
配給:松竹
公式サイト:http://www.shochiku.co.jp/kinoshita/hajimarinomichi/
©2013「はじまりのみち」製作委員会


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『二十四の瞳』『喜びも悲しみも幾年月』『楢山節考』などを手掛けてきた巨匠・木下惠介監督が、
戦時中、病気の母親をリヤカーに乗せて、60キロ先の疎開先へ山越えをしたという実話を元に、
木下惠介監督の映画に対する思いや、母と子の愛情を描いた人間ドラマ。


監督は『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』、
『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』、『河童のクゥと夏休み』など、
名作アニメを世に送り出してきた原恵一で、実写初挑戦となる。


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『嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』は、小生の人生を変えた一本だし、
『嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』は、マスターピースだし、
『河童のクゥと夏休み』もオールタイムベストだ。


原恵一監督が描く世界観やテーマが大好きで、
その考え方には尊敬の念さえ抱いている。


敬愛してやまない原恵一監督の初の実写映画を見ないわけにはいかない。


で、見たのですが、個人的には“異色作”でした。


こんな映画見たことないです。
原恵一監督は、他と比較できない映画を目指したといっていた。
そういった意味では、達成していると思う。


劇中、木下惠介監督の『陸軍』の長いラストシーンや、
『二十四の瞳』、『カルメン故郷に帰る』など代表作の映像がインサートされる。


『はじまりのみち』で描かれていたエピソードの数々が、
それらの作品にリンクしているところがある。


原恵一監督が、木下惠介監督作品からインスパイアされて、
劇中に盛り込んだ事実ではないエピソードもあると思うけど、
木下惠介監督が作品に込めた思いが伝わってくるところもあり、そこが見所だったりする。


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原恵一監督は、木下惠介監督のことが大好きで、
多くの人に木下惠介監督の凄さを知ってもらいたい、作品を見てもらいたいと、
これまでも至る所で啓蒙活動を続けてきたという。


そんな流れからか、木下惠介監督生誕100年のイベントへの協力を頼まれ、
次いで映画を作るから脚本を書いて欲しいと依頼され、
だったら監督もやりたいと直訴したという経緯がある。


そして出来上がった作品からは、
原恵一監督の「木下惠介ラブ」がバンバン漂ってきた。


「あぁー、本当に木下惠介監督が好きなんだなぁ」ってことが超よくわかりました。


実は、小生は木下惠介監督作品を一本も見たことがないという不届き者なのですが、
『はじまりのみち』を見て、木下惠介監督作品を見たくなりました。


『はじまりのみち』の中で流れるダイジェスト映像を見て、
『陸軍』とか、「戦時中に良くこんなシーン撮れたな」って思ったし、
その他の作品からも、それぞれ「凄み」や「力強さ」を感じた。
ジャンルもバラエティに富んでいて、実験的な撮り方もしている。


ということで、「他と比較できない作品を作る」、
「木下惠介監督の凄さを伝える」という原恵一監督のミッションは、見事に遂行された。


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しかしながら、小生は、本作の根幹は、母と子のドラマだと思うのですよ。


この一番大切にしなくてはいけないであろう部分が、どうもピンとこなかった。


母と子なんで、言葉がなくても通じ合えるのかもしれないが、
もう少しドラマがあってもいいんじゃない?って。


旅館の前で、木下惠介が母親の顔に付いた泥を拭うシーンの音楽とか、
無理に感動させようという盛り上げ方で、ちょっと見ていて恥ずかしくなったりして・・・。


ただ泥を拭っているだけで、なぜこんなに大仰!?


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あと、資料に掲載されていた助監督の日記を読むに、
撮影日数がかなり限られていたから仕方ないのかもしれないけど、
リアカーでの山越えの大変さがあまり伝わってこない。


上映時間96分なので、もうちょっと山越えに時間を割いても良かったんじゃないかなぁっと。


木下惠介監督作品がすごそうだということは判ったが、
肝心の人間ドラマの部分が、刺さらず。


「二兎を追う者は一兎をも得ず」と言ったところでしょうか?


あと、本作を見ていくつか感じたことがあるので、書きます。


ひとつは、ユースケ・サンタマリアの演技。


こんなに演技上手かったっけ?


リアカーでの山越えを決めるシーンとか、
抑えた演技がよかったです。


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それから木下惠介監督作『笛吹川』の映像も流れたんだけど、
『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』に全く同じシーンがあった。


原恵一監督が、『笛吹川』にオマージュを捧げたに違いない。


木下惠介監督もまさかギャグアニメに、
自身の作品の一部が反映されるとは、思いもよらなかったことでしょう。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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