2013年05月29日更新

『バレット』ウォルター・ヒル 取材記

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『バレット』
2013年6月1日より新宿ピカデリーほか全国にて
配給:松竹
公式サイト:http://bullet-movie.jp/
©2012 The Estate of Redmond Barry LLC.All right reserved.


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この部屋、なんと2年ぶりの更新!!


4月3日、内容は覚えていないが、夢にダイアン・レインが出てきた。


明け方5時ごろに目を覚まし、「なんでダイアン・レイン?」と我ながら不思議に思う。
そして、無性にダイアン・レインの若い頃の容姿が見たくなった。
特に「銀座じゅわいよくちゅーるマキ カメリアダイヤモンド」のCMが見たい。


どうせもう寝付けないだろうからと、布団の中でゴロゴロしながら、
早速、iPhoneのyoutubeで「ダイアン・レイン」を検索。


すごい世の中ですね。
「'86-88 ダイアン・レインCM集」に含まれた形で、ちゃんとアップされていた。





美しいダイアン・レインが拝める懐かしのCM集を堪能した後、検索に引っかかった
「Inside "Streets of FIre" ストリート・オブ・ファイヤーのメイキング」が目に留まった。


ダイアン・レイン扮するロック・シンガーが超セクシーなんだよねぇ。
ちゅーことで、再生。





メイキングなんで、ウォルター・ヒル監督も登場。
“ウォルター・ヒルわけぇ!!”とひとりで興奮。


映画のシーンも懐かしくって、
久しぶりに『ストリート・オブ・ファイヤー』が見たくなった。


持っていたサントラを売ってしまったことを後悔しつつ起床し、出勤。


そして、その日の夕方、
「6/1公開『バレット』ハリウッド最後の伝説、ウォルター・ヒル監督初来日決定!!」
というメールが届いた。


たまげました。
こんな偶然、あるのでしょうか?


最近は、諸事情によりインタビューのオファーがあっても、
よっぽどのことがない限り断っているんだけど、
ウォルター・ヒルに取材できるチャンスは、恐らくもう二度とないだろうし、
朝の出来事も何かの縁を感じたし、
珍しくこちらから宣伝担当の方に、さりげなく取材できないかきいてみた。


そうしたら、すぐに“可能”という返答が。
しかも会社から近い場所での取材というではないか。


ということで、取材決定。


ガキの頃にテレビで見た『ストリート・ファイター』、『ザ・ドライバー』、
『ウォリアーズ』、『ロング・ライダース』、『48時間』、
『ストリート・オブ・ファイヤー』といったマスターピースたち。


血のりブリット付きの前売券を買って、吉祥寺の映画館で初日に見た『ダブル・ボーダー』。
ヤクルトホールで行われた試写会で見た『レッド・ブル』。


金がなくて劇場で見られず、レンタルビデオで見た『ジョニー・ハンサム』。
超駄作で帰って来なければ良かったのにと思った『48時間PART2 帰ってきたふたり』。


映画に熱中した多感な時期に、多くのウォルター・ヒル監督作品を見てきた。


今までたくさんのインタビューをしてきたけど、
やっぱり子供頃から知っていた監督や俳優さんへのインタビューは格別だ。


そんな思いを抱きながら迎えた取材当日、取材部屋に入ると、
ウォルター・ヒルが、突っ立っていた。


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握手を交わしながら「My name is Kazuyuki Itoh」と自己紹介。


毎度のことなんだけど、発音の悪さも手伝ってか、
どうも「Kazuyuki」というのは聞き取りにくいようで、
ウォルター・ヒルも「Kazuyuki?」と鸚鵡返しをしてきた。


そこで、「Kazu」と呼んでくれと願いを込めて「Kazu」を強調すると、
「OK!Kazu!Nice meet to you!」と一発で覚えてもらった。


外人には「Kazu」が有効だ。


さて、現在、ウォルター・ヒルは71歳なんだけど、
元々童顔というのもあるのでしょう、年の割には若々しい。


しかしながら、ウォルター・ヒルが腰掛けた瞬間、
ポテポテのお腹が、ベルトの上にボッテと乗っかった。


自分も腹回りが気になっていたんだけど、
ウォルター・ヒルの腹を見て、「俺はまだ全然大丈夫じゃん」と思ってしまった。


こういう安心は危険だ。


それはさておき、インタビュー。


東京の印象なんかを聞いた後、オフにどこかに行くのか尋ねたら京都に行くと。


ウォルター・ヒルは、黒澤明を敬愛しているし、
『用心棒』のリメイク『ラストマン・スタンディング』も撮っているので、
「東京から程近い鎌倉に、黒澤明のお墓があるから行ってみては?」と伝えるも、
「そうなんだ」程度。


もっと乗っかってくるかと思ったのに、ちょっとガッカリ。





その後は、『バレット』のことや主演のシルベスター・スタローンのことなんかを語ってくれたんだけど、
終始上機嫌だった。


『バレット』は10年ぶりの復帰作であり、
念願叶ってシルベスター・スタローンと初タッグを組んだ作品。


にもかかわらず、アメリカでの評価は低く、大コケ。


精神的に大きなダメージを食らったはず。


でも、日本には自分を含め、ウォルター・ヒル監督作というだけで、
無条件で見たくなる日本の映画ファンは、それなりにいるようで、
好意的、情熱的なインタビューをたくさん受けたと言っていた。


アメリカとの温度差に戸惑いつつも、熱烈歓迎が凄く嬉しかったみたい。


でも、やっぱり不安なようで、
「『バレット』はどうだった?」と逆に感想を求められたりした。


最後に「次回作楽しみしています。出来る限り映画を撮り続けてください!!」と伝えてインタビュー終了。


すると、最後にウォルター・ヒルが、「カズ、今度、LAにおいでよ」と言ってくれた。

リップサービスだとしても、「おぉ!嬉しいじゃないか!」と喜んでいたら、
「カズがLAに来て、スタジオを作ってくれたら、たくさん映画が撮れるよ。
 だからLAにスタジオを作ってくれ」と付け加えた。


もちろんジョークなんだけど、
この言葉の裏にウォルター・ヒルの複雑な心境を垣間見たような気がする。


先述の通り、『バレット』はアメリカで大コケした。
10年前に撮った前作『デッドロック』もコケた。


アメリカではウォルター・ヒルは、“過去の人”なんじゃないか?


日本の信者からは、「あなたの作品が大好きです」、「また作品を撮ってください」、
「次回作を楽しみにしています」と言われるけど、
実のところ、ウォルター・ヒルは、映画を自由に撮れる環境に身を置いていないのでは?


だから10年のブランクがあった。


スタローンが、『バレット』の監督にウォルター・ヒルを推した際、
反対する意見があったと資料に書かれていた。


ウォルター・ヒルは、来日時に『何がジェーンに起こったか?』をリメイクするし、
他にもいくつか企画があると語っていた。



この映画凄いです。


IMDBで確認してみると、次回作に「St. Vincent」という作品があった。
調べたところ、ピアース・ブロスナン、ビリー・ボブ・ソーントン、マリア・ベロ出演のアクション・スリラーのようだが、
「in production」で、製作年は「???」になっている。


次回作を尋ねられたときに、なんで「St. Vincent」って答えなかったんだろう?


本当に作るのかな?


まぁ「St. Vincent」は製作されたとしても、
『何がジェーンに起こったか?』やその他の企画はどうなんだろ?


不況、不況と言われ続けているハリウッドで、
71歳の老監督にそうそう仕事の話があるようとは思えないんだよね・・・。


そんな状況から、先の「スタジオを作ってくれ」発言が出たような気がしてならない。


憶測でしかないんだけど、なんだかちょっぴり寂しい気分になってしまった。


生涯現役で、引き続き男クサイ映画を撮り続けてほしいなぁ。


最後に写真を撮ったんだけど、ムッツリしていたので、
「スマイル、プリーズ」と言ったら、ニッコリと微笑んでくれました。


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【『バレット』ウォルター・ヒル監督インタビュー】


意外にも初来日ですが、日本の印象は?

■ウォルター・ヒル:まだ二日しか滞在していないけど、楽しんでいるよ。僕の作品のファンから、熱烈な歓迎を受けて、嬉しい限りだね。街に出ると活気があって、ものすごいエネルギーを感じる。一緒に来ている妻と娘も満喫しているよ。


オフはないのですか?

■ウォルター・ヒル:昨日、明治神宮や竹下通りに行ったよ。明日からは京都に行く予定なんだ。


本作を撮るに至った経緯は?

■ウォルター・ヒル:脚本を書いていたら、突然、電話がかかってきたんだ。相手はシルベスター・スタローンって奴だったんだ(笑)。読んで欲しい脚本があるという用件でね。早速バイク便で送ってもらって、読んだんだが、その翌日にはスタローンと会っていたよ。僕がいろいろとアイディアを出したら、スタローンは「それでいこう」と言ってくれて、後はとんとん拍子で話が進んでいったんだ。


スタローンとは初仕事になりますね

■ウォルター・ヒル:スタローンとは30年来の友人で、何度も一緒に仕事をしようと言っていたんだが、これまで形にすることができなかったんだ。


形になったご感想は?

■ウォルター・ヒル:馬が合ったね。お互いに「この企画は伸るか反るかだな」と言っていたんだが、結果的にうまく噛み合ったと思う。スタローンは監督経験もあるが、今回は役者に徹してくれて、好きなように撮らせてくれたよ。逆に言えば、『バレット』を見た観客が演出面で不満を感じたら、それは全部僕の責任だね。


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■スタローンの仕事ぶりは?

■ウォルター・ヒル:強い個性を持っていて、意見もはっきり言う。とにかくよく働く男だよ。スタローンと私が、同じような道のりを歩んできたからこそ、素晴らしい信頼関係を築くことが出来たんだろう。これは歳をとった監督の数少ないメリットのひとつだね(笑)。


スタローンへの演技指導は?

■ウォルター・ヒル:役を作り込んできて、大きく演技をするのではなく、スタローン自身の個性をそのまま活かした役作りをして欲しいと思っていた。このアイディアを提案したら、スタローンも気に入ってくれて、自然な演技を心がけてくれた。きっと彼自身も満足しているはずだよ。


プライベートでのスタローンは、どんな感じですか?

■ウォルター・ヒル:映画スターであることを楽しんでいるね。プライベートの時に顔を隠したりする役者もいるけれど、彼はそうじゃない。ファンから手を振られたり、握手を求められたり、レストランでいい席を用意してもらえたりすることが好きなんだ。有名人だからこそ味わえる喜びだと感じているのさ。


『バレット』は、2001年の『デッドロック』以来となる監督作ですが、ブランクの心配は?

■ウォルター・ヒル:あったよ。どの作品も取り掛かる時はプレッシャーを感じるけれど、今回はより大きかったね。


フィルムからデジタルの移行やCG技術の発達など、この10年間で映画製作の環境は大幅に変わりましたが、影響は?

■ウォルター・ヒル:おっしゃる通り、大きく変わった。でも技術的なことよりも、パーソナルな不安の方が大きかった。「自分はまだ監督を出来るのか?」って自問したよ。歳を取った野球選手が、「まだ試合に出られるのか?」ってもがき苦しんでいるのに似ているね。


ウォルター・ヒルの新作というだけで、無条件に「見たい!」と思うファンが、日本にはたくさんいますよ。

■ウォルター・ヒル:グッド!!それは良い話だね(笑)。確かに日本のインタビューでは、ポジティブな意見が多いと実感しているよ。アメリカの取材は、険悪な雰囲気になることもあるから……。それはあんまり楽しくないね。


『バレット』を含め監督の作品はシンプルですが、CGテンコ盛りの映画が多い中、逆に新鮮では?

■ウォルター・ヒル:シンプルな作風の方が、人間性を見せる余地が多いね。ただ『バレット』を70年代、80年代に公開していたらどうだっただろうか?あの時代は、同じような映画が多かったから、ファンはもっと別のスタイルの映画を求めたかもしれない。作品の真価は、公開から20年後にわかるという言葉があるけれど、言い得て妙だと思うね。初めて見たときはつまらなくても、20年後に見たら面白いという作品があろうだろう?またその逆もあるけれどね。


本作に込めた思いは?

■ウォルター・ヒル:70年代、80年代のアクション映画へのオマージュはあるね。でもオマージュだけでは、ストーリーを語ることは出来ないから、映画は成立しない。世の中には熱いファンもいれば、たまたま見る人もいる。いろんな観客を想定して作品を作っていかなくてはいけない。多くの観客をひきつけて、尚且つ楽しんでもらえるように、ストーリー、キャラクター、テーマ、サプライズ的な要素など、何度も何度も考えたんだ。本当に映画作りってのは、大変な仕事なんだよ!(笑)


では最後にこれから『バレット』を見る日本の方々に一言お願いいたします。

■ウォルター・ヒル:映画の見方をあれこれいうのは、難しいんだよ。もう撮り終えて、送り出してしまっているからね。とにかく楽しんでくれたら嬉しいよ。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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