『エンド・オブ・ホワイトハウス』
2013年6月8日より新宿ピカデリーほか全国にて
配給:アスミック・エース
公式サイト
©2013 Olympus Productions,Inc
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“鉄壁の要塞”ホワイトハウスが襲撃、占拠された。
大統領を人質にとったアジア人テロリストの要求は二つ。
日本海域からの米国第七艦隊の撤収。
そして核爆弾作動コードの入手。
敵の手に落ちたホワイトハウスはまさに難攻不落となり、
特殊部隊の救出作戦も失敗。
誰もが諦めかけたその時、一人の男が潜入に成功する。
かつては大統領専任のシークレットサービスとして活躍していたが、
2年前、大統領夫人の命を守れず、
今は官邸周辺の警備員となり下がっていたマイケル・バニング。
「生きたまま救出せよ」の命を受け、
ただ一人、巨大な要塞の“深部”へと向かうが…。
ジェラルド・バトラー主演のサスペンス・アクション。
限られた空間で、テロリストとひとりで戦うということで、
ホワイトハウス版『ダイ・ハード』という感じだが、
残念ながらその出来は『ダイ・ハード』の足元にも及ばない。
バニングの取る行動は行き当たりばったりだ。
いや、行き当たりバッタリなのは、よくわからない状況で戦うのだから仕方がない。
今そこにある危機をひとつひとつ片付けていくしかない。
しかし、最終的に何をどうやったら大統領を生きたまま救出できるのか?
ということがよくわからないまま物語が進んでいく。
大統領たちは、地下にあるバンカーと呼ばれる危機管理センターに捕らわれているのだが、
バンカーは核シェルターの機能を有する頑丈な施設。
バニングが持つ、限られた武器で、どうやってその牙城を崩すのか?
特にこれといった計画も語られないまま、
バニングは「絶対に生きたまま大統領を救出する」と言い張る。
なんだか根拠のない自信のように見えてしまうのですよ。
ひとつひとつの危機回避が単発で、目標を達成するまでの行動計画がわからないから、
イマイチ燃えない。
でもって、流石は自信家、バニングはメチャクチャ強い。
スティーブン・セガール級に強い。
まぁ、ヒーローものなんで強くていいんだけど、
あまりにも強いとハラハラしないんだよね・・・。
バニングがメッチャ強いのに対して、
ホワイトハウスを守るほかのシークレットサービスやアメリカの特殊部隊が、
とんでもなく弱い。
テロストの銃弾を浴びて、いとも簡単に死にまくる。
“鉄壁の要塞”とはこんなものか?
さらに人質に取られた大統領や国防長官が弱っちい。
それぞれが核爆弾作動コードを記憶しているんだけど、、
テロリストたちは銃を突きつけ、殴り、コードを聞き出そうとする。
大統領は口を割らないが、他の2人はあっさりとゲロしてしまう。
(特に国防長官。でも演じているメリッサ・レオが素敵です)
ひとりの命と数多の人命。
どっちが重いのか?
命の重さを考えさせられるわけですが、
君たちは有事の際に、自らの命と引き換えに国を守るという覚悟を持って、
国を司る職に付いたのではないのか?
と思ってしまうほど、根性がない。
でも政治家ってのは、実際にはこんなもんなのかもしれん。
それから大統領の息子が、ホワイトハウス内に隠れていて、
テロリストは息子を捕らえて、大統領の口を割ろうという計画を立てる。
これはナイスアイディアだ。
しかし、これが全く生きてこない。
このアイディアは、結構早い段階でフェイドアウト。
しかもテロリスト側は、途中で息子の存在を忘却する始末。
この物語を面白くするのは、間違いなく大統領の息子の存在だと思う。
だからこそ、冒頭の大統領夫妻と息子のやり取りがあるんでしょ?
製作側が、頭の中では分かっているのに、実行できない。
アイディアは良いのに、なし崩しになる。
そんなダメさ加減が伝わってくる。
あと、一見、大作風だけど、“ザッツ合成”的なシーンが多い。
リアリティを追求した有り得そうな題材を扱っているからこそ、
そこは大事にするべきでしょう。
とにかくあらゆる点が雑。
と、散々書きましたが、この映画が嫌いかというとそんなことはありません。
むしろ好きです。
120分、大いに楽しめました。
この穴だらけで、大雑把で、予定調和だらけで、
高田純次級にテキトーなところが良い。
ツッコミ所満載なんだけど、退屈せずに見せきってくれる勢いがあった。
デンゼル・ワシントンにオスカーをもたらした『トレーニング デイ』など、
硬派で知的な作品(『リプレイスメント・キラー』を除く)を撮ってきた
アントワーン・フークアが、こんなバカ映画を撮った。
凄いことです。
映画は時代と共に洗練されて、見る側もよりグレードの高いものを求めるようになった。
我々四十路が、若い頃に浴びるように見ていた80年代のアクション映画には、
粗だらけの微妙な作品が結構ある。
『コブラ』とか『コマンドー』とか・・・。
でも楽しかった。
雑でテキトー。
日々の仕事でそういう人とお付き合いするのはゴメンだが、
映画だったら、まぁ、いいっか。