2013年07月19日更新

#708 『風立ちぬ』

kazetachinu.jpg

『風立ちぬ』
2013年7月20日より全国にて
配給:東宝
©2013 二馬力・GNDHDDTK


____________________________________________________________


2008年の『崖の上のポニョ』以来、5年ぶりとなる宮崎駿監督作。


主人公は堀越二郎。
飛行機造りに情熱を燃やす姿と、美しい女性、菜穂子との恋模様が描かれている。


堀越二郎は、零戦の設計者として知られる実在の人物で、
本作の二郎のモデルになっている。


さらに宮崎監督は、物語に幅を持たせるためか、
堀越二郎と同時代の昭和初期に活躍し、「風立ちぬ」という小説を書いた作家、
堀辰雄もモデルにしている。


「風立ちぬ」は、堀辰雄の実体験をもとに書かれた小説で、
1954年に久我美子、石浜朗主演で、1976年に山口百恵、三浦友和主演で映画化されており、
そのあらすじを読むと映画『風立ちぬ』のどの部分が、
モチーフとして使われているのかがわかる。


しかしながら映画『風立ちぬ』のネタバレになるので、
小説や過去の映画を知らない人は、触れない方がいいかもしれません。


逆に、既に知っている人は・・・。


さてさて、映画『風立ちぬ』ですが、今までの宮崎駿監督作品をイメージして見に行くと、
肩透かしを食らう可能性があります。


オトナ向け。
新境地開拓。


ファンタジー色薄め。
人間ドラマ、特に菜穂子との恋愛模様が濃いめ。


kazetachin2.jpg


物語は完全なフィクションなんだけど、
実在の人物がモデルとなっていること考えると、
ファンタジー要素を突っ込みにくいわけでして、
この題材を選んだ時点で、まぁ、それは仕方がないことなのかなと。


とはいえ、毎度驚かされる宮崎駿監督にイマジネーションは健在で、
冒頭の飛行シーンや度々二郎の夢に登場するイタリアの飛行機設計者カプローニのシーンなど、
流石だなぁと思わせてくれる。


少ないからこそ、より心に残るのかもしれない。


中でも二郎が汽車に乗っているときに遭遇する関東大震災の描写は秀逸。
その絵もさることながら、地震の地響きを伝える音の使い方も凄い。


どうやったらこういう発想が出来るのだろう?って。


後で知ったんだけど、本作の効果音は全て人の声で表現されているそうで、
地震以外にも飛行機のプロペラ音、蒸気機関車の蒸気、車のエンジン音が、
人の声によって作られている。


なんとなく全体的に柔らかい印象を抱いたんだけど、
SEを人の声にした効果の表れだったのかもしれない。


音だけでなく、飛行機や手書きといった宮崎駿監督のこだわりが随所に見受けられるのですが、
“作品を通して伝えたい思い”にも、毎度のことながら強いこだわりを感じた。


二郎の夢を諦めない信念。
二郎と菜穂子の純愛。


戦争。
地震。
復興。


そして、生きることの意義。


kazetachinupso.jpg


今の時代だからこその宮崎駿監督のメッセージが、
セリフや主人公たちの行動などに明確に打ち出されている。


と、こ、ろ、が・・・、これが全く響かなかったんですよね・・・。


宮崎駿監督の言いたいこと、伝えたいこと、感じて欲しいことは理解できる。
でも、腹に落ちてこない。


なんでだろうか・・・。


主人公の堀越二郎に自分を投影出来なかったのかなぁ・・・。


ということで、正直、あんまりピンと来ませんでした。


ただ、上映後には拍手が起きていたので、刺さる方には刺さるのでしょう。
(まぁ、どの映画もそうなんですけどね)


あっ、あと二郎の声を担当した庵野秀明が不評のようですが、
のっぺりとした声に面食らったのは最初だけで、そこまで気になりませんでした。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.t-shirt-ya.com/blog/cgi/mt-tb.cgi/2449

この一覧は、次のエントリーを参照しています: #708 『風立ちぬ』:

» 風立ちぬ : 完全大人仕様のジブリ作品 送信元 こんな映画観たよ!-あらすじと感想-
 暑い、暑い、暑い、ですねぇ。こんな日は海水浴にでも行くか、エアコンの効いた映画館に行くのがよいのではないでしょうか。では、本日紹介する作品はこちらになり... [詳しくはこちら]

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)




リンク

プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
Powered by
Movable Type