新宿PART2 太宗寺 (伊藤Pのブログ)

「新宿PART1 花園神社～新宿御苑」の続き。

「成覚寺」に向かいがてら、案内板でその存在を知った「太宗寺」へ。

寄り道のつもりだったんだけど、この「太宗寺」が本日のメインになった。
それほど濃くて、新宿の歴史を語る上で欠くことの出来ないお寺でした。

靖国通りと新宿通りの間を平行して貫く仲通りを進み、
現在工事中で、ハッテン場として有名な新宿二丁目公園の裏手に回ると「太宗寺」があった。

本堂はなんだかお寺とは思えないフォルムだ。

由緒書きによると、「太宗寺」は慶長年間（1596年頃）に、
太宗という僧侶が開いた草庵が前身で、
後の信州高遠藩主内藤家の菩提寺として発展した寺とのこと。

つまり先程の「新宿御苑」に下屋敷があった内藤清成の縁の寺ってことだ。
境内に設置された案内板を見ると「内藤正勝の墓」がある。

内藤正勝は、内藤清成の三男で、寛永6年（1629年）に22歳の若さで死去し、
この「太宗寺」で葬儀が営まれ、それが縁で「太宗寺」が内藤家の菩提寺となった。
（内藤清成の墓は、台東区の西福寺、鎌倉材木座の宗仲寺にあるらしい）

早速、「内藤正勝の墓」へ手を合わせに行きたいところだが、
「太宗寺」の境内はあまり広くないにも関わらず、
目を引く文化財がそこかしこに。

まず門をくぐって右手にドーン！と「銅造地蔵菩薩坐像」。

いやー、インパクト大です。
写真だと判らないかもしれませんが、かなりデカイ。

新宿にこんなに大きな地蔵があるとは。

こちらは、江戸時代の初め、江戸の出入り口六か所に造られた「江戸六地蔵」の一つ。

高さは267cm。
正徳2年（1712年）に「江戸六地蔵」の三番目として甲州街道沿いに造立され、
作者は神田鍋町の鋳物師、太田駿河守政儀とのこと。

深川の地蔵坊正元の呼びかけで、太田政儀が「江戸六地蔵」を作ったのですが、
ここに歴史ミステリーが潜んでいたのです。

以前、【散策の部屋】「吉祥寺（駒込）」で、
「八百屋のお七」について“そうだったのか！？」というエピソードに出くわしたと記述した。

それがこの「銅造地蔵菩薩坐像」と関わってくるのですが、
詳しくは、下のyoutube「江戸六地蔵を作らせた男(八百屋お七との悲恋話)」を見て頂きたい。
（超面白い）

丁度、「吉祥寺（駒込）」を書いている時に、この動画を発見したのですが、
その時に既に「太宗寺」を訪問していたので、その繋がりにちょっと震えました。

とにもかくにも上記の「江戸六地蔵を作らせた男(八百屋お七との悲恋話)」は凄い。

将来的には、ただ散策するのではなく、散策し、調査した結果、
自分なりの持論に辿り着くような文章を書きたいと思った。

「銅造地蔵菩薩坐像」から時計回りに境内を回って見ることに。

「百度石」。

「お百度詣り」の起点となる石柱で、
「百度石」と本堂を100往復すると祈願成就する。

この「百度石」の傍にお墓のような石碑があったんだけど、
由緒書きもないうえ、彫ってあった文字も風化してしまい、
なんの石碑なのか全くわからなかった。

続いては、「塩かけ地蔵」。

願掛けの返礼に塩をかける風習のある地蔵尊。
造られた年や由来については不明とのこと。

お隣に「不動堂」があり、そこには「三日月不動像」と「布袋尊像」が祀れている。

「三日月不動像」は、下記、写真だと全く分かりませんが、
額の上に銀製の三日月が施されているのが、その名の由来。

製作年、作者不明。
高尾山薬王院に奉納するために甲州街道を運搬中、
休憩で立ち寄った「太宗寺」境内で、石のように動かなくなったために、
そのまま安置されたとのこと。

もうひとつ、「新宿の手七福神布袋尊像」は、
新宿山の手七福神のひとつで、昭和初期に創設されたもので、
あまり歴史的な重みはない。
だからこそ有形文化財に指定されないのでしょう。

「不動堂」の脇には墓地へと続く道があり、
その道を直進すると「内藤正勝の墓」に辿り着く。

真ん中が正勝の墓で、右が信州高遠十三代藩主頼直、
左側が内藤家累代の墓。

内藤正勝の墓から振り返ると本堂が見えるんだけど、
やっぱり不思議な形だ。
ちょっと近未来。

なんとなく「ヱヴァンゲリヲン」が思い浮かぶんだよなぁ・・・。

墓地を出ようと来た道を戻ると、
「不動堂」の裏側へ行ける道があり、
行ってみると墓石と庚申塔らしきものが、ひっそりと存在していた。

横に案内板（？）があり、そこに「光明名號」と書かれていたんだけど、
良くわかりません。

墓地を出て本堂を通り過ぎ、「庫裏（くり）・客殿」（庫裏：僧侶の住まい）の手間にあるのが、
「切支丹燈篭」。

江戸時代のキリスト教弾圧の際に、隠れ切支丹が密かに礼拝していたもの。

上から、宝珠、笠、火袋、中台、竿という風に部位が分かれていて、
この形状を大名で茶人の古田織部という人が好んだことから、織部型燈篭という。

この切支丹燈籠は、昭和27年に内藤家の墓から竿の部分が出土し、
他の部分は復元補正されている。

出口の方に向かうと「閻魔堂」がある。

中を覗くと真っ暗なんだけど、
格子にボタンが付いていて押すとライトが点き、「閻魔像」が浮かび上がる。

閻魔大王に関しては、【散策の部屋】「秋川渓谷」の「大悲願寺」のところで記しているので転載します。

「よく初七日、四十九日といった法要を耳にする。
　仏教では、人間は死後、冥土で極楽へ行けるか、
　地獄行きになるかの裁きを受ける。

　その裁きをするのが、有名な閻魔大王ほか、十人の王たちで、
　裁きは7日ごとに7回行われる。

　7日目、三途の川を渡って最初に裁きを受け、それをあと6回繰り返す。
　49日目、最後に裁くのが閻魔大王だ。

　彼が極楽か地獄かの判断を下すわけだが、
　行く先が決まらない間は、死者の魂は宙を彷徨っているので、
　7日ごとに故人と縁ある人たちが、供養をして魂を励ます。

　これが、初七日、四十九日の法要にあたる。
　7日毎、7回の供養が簡略化されて、初七日、四十九日が一般的に残ったらしい」

この「太宗寺」の「閻魔像」は、
文化11年（1814年）に安置され、製作もその頃とされているが、
火災による度重なる補修で、当時の部分は頭部のみとのこと。

江戸時代は、藪入り（１月と7月の16日に奉公人が休暇をもらって家に帰ること）に、
閻魔大王の縁日が出て賑わったという。

三遊亭金馬「藪入り」

高さ550cmという迫力満点の閻魔大王の左横には、
これまた恐ろしい形相の「奪衣婆像（だつえばぞう）」（高さ240㎝）が、座っている。

奪衣婆像は以前読んだ雑誌に特集が組まれていて、
以来、拝んでみたい像のひとつだった。

散策を始めて早1年だけど、奪衣婆像に巡り合えていなかったので、
この出会いは相当嬉しい。

奪衣婆は、閻魔大王に仕え、三途の河を渡る際に、
渡し賃である六文銭を持たずにやってきた亡者の衣服を剥ぎ取る老婆のこと。

亡者の衣の重さには、その人の生前の業が現れ、その軽重で死後の処遇が決められた。

なんとも気持ちの悪い「奪衣婆像」ですが、こちらは明治3年（1870年）製作で割と新しい。

解説板には、「衣をはぐことから、内藤新宿の妓楼（遊女を置いて、客を遊ばせる店）の商売の神として、
『しょうずかのおばあさん』と呼ばれて信仰されました」と書いてある。

でもこの「奪衣婆像」は明治3年（1870年）製作。
内藤新宿は享保3年（1718年）に廃止、明和9年（1772年）に再開され繁栄するも、明治維新（1868年）で終了。

時代が合わんのですよ。

と、疑問を抱きたくなることもありましたが、
「太宗寺」が、ここ新宿と深い関係であることが良くわかりました。

新宿にとってとても大切な寺院を後にし、
いよいよ「成覚寺」へと向かう。

以降、「新宿PART3 正受院＆成覚寺」に続く。