『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』
2014年4月19日より全国にて
配給:東宝
©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2014
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ぎっくり腰になってしまった野原ひろし。
治療の為にマッサージに行ったら、なんとロボットになってしまった。
ロボット化したひろしに戸惑うみさえと喜ぶしんのすけ。
料理、庭掃除、雨どいの修理、シロの小屋の修繕をテキパキこなし、
徐々にみさえの信頼を得るが、
ひろしのロボット化にはある陰謀が隠されていた。
それは、家庭での立場がすっかり弱くなってしまった日本の父親たちの復権を目論む、
「父ゆれ同盟」が仕組んだ“父親革命”の始まりだったのだ・・・。
劇場版「クレヨンしんちゃん」第22弾。
監督は高橋渉。
劇場版「クレヨンしんちゃん」シリーズでは、今回が初監督だが、
1992年から制作進行としてテレビアニメ「クレヨンしんちゃん」に携わり、
劇場版も98年の「電撃!ブタのヒズメ大作戦」以降、
数多くの作品で、制作進行、制作デスク、演出助手、絵コンテ等で関わっている。
いわば、「クレヨンしんちゃん」を知り尽くした人物。
そんな長きに渡って「クレヨンしんちゃん」を支えてきた男が、
遂に満を持して登場といったところでしょうか?
まずポイントは、野原ひろしが劇場版で初めて主役になったこと。
声を担当している藤原啓治が、
「かつてないセリフの量だった」とコメントしている通り、
全編ほぼ出ずっぱり。
途中、ロボひろしと本物ひろしが対峙し、
藤原啓治がひとりで会話をするというシーンもある。
藤原啓治ファンだったら悶絶間違いナシでしょう。
そして、このロボひろしと本物ひろしの同時登場が、
作品に大きな深みを与えている。
ロボひろしと本物のひろしが、いがみ合い、
どっちが本当の父であり、夫であるかをアピールする。
なんでも出来るロボひろし。
だけどロボット。
ずっと一緒だった生身のひろし。
でもロボひろしほど、万能ではない。
どっちのとーちゃんも好きなしんのすけ。
この狭間の揺れ加減が絶妙だし、
観客もしんのすけやみさえと同じ心境に置かれる。
実は上映中、ガンガン泣いている小学低学年の男の子がいた。
怖いくて泣いているのかと思ったんだが、
後で聞いてみたら、「違う」という。
上手く説明できないようだったが、
どうやらどちらのとーちゃんを選んで良いのか戸惑い、
わけがわからなくなり、泣いてしまったそうな。
さらにこの後、ロボひろしはある決断をするのだが、
そこでもその男の子は、声を上げて泣いていた。
なんでも、父親の存在について思うところがあり、涙したという。
また、別の子供は、別の理由で感動して泣いたと言っていた。
今までの「劇場版クレヨンしんちゃん」は、
大人が感動して泣くケースが多かったが、
今回は、子供が心を動かされて泣く。
しかも、子供の受け止め方が異なり、
それぞれの思いから涙する。
凄いじゃないかぁ!
そして、しっかり大人も泣かせるのですよ。
小生は2回ほど、涙が頬を伝いました。
前に座っているお父さんも、こっそりと涙をぬぐっていました。
正直、見る前から「泣かせよう臭」が漂っているとは思っていた。
しかし、、ロボひろしと本物のひろしの同時登場によって、
予測していた「泣き」とは、良い意味で違う「泣き」となった。
してやられましたね。
ひろしが主役とはいえ、しんのすけの見せ場もしっかりとある。
ひまわりとシロの活躍は、かなり控えめなものの、
みさえ、カスカベ防衛隊の面々は、程よい感じで登場してくれる。
そのバランス感も悪くない。
また、劇場版史上初となる2作連続ゲスト出演となるコロッケが、
素晴らしい。
言われなければ、コロッケだったとはわからなかったと思うな。
本当に多才だ。
今回、コロッケは声以外のところでも大活躍するので、
その辺も大きな見どころのひとつ。
それからロボットということで、
『アイ、ロボット』、『パシフィック・リム』、
『アイアンマン』といったロボット系映画のオマージュシーンが、
バンバン入っているのも見ていて楽しかった。
もちろん、「クレヨンしんちゃん」になくてはならない、
“ギャグ”も満載だ。
しかも、今回はギャグのバリエーションが豊富だった。
いつもの日常的な「クレヨンしんちゃん」が描かれつつ、
劇場版ならではの非現実的な世界観も展開される。
物語も深いし、それが大人だけではなく子供にも何かしらリーチする。
前年の『バカうまっ! B級グルメサバイバル!!』も面白かったけど、
その上をいく、なかなかハイグレードな一本でした。