『女体銃 ガン・ウーマン/GUN WOMAN』
2014年7月19日より新宿バルト9、広島バルト11ほか全国にて
配給:マクザム/FAITHentertainment
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大財閥の息子・浜崎に妻を殺された男“マスターマインド”は、
復讐だけを誓い生きていた。
やがて、彼はひとりの女の命を金で買い、暗殺者へと育て上げるのだった。
壮絶な特訓の果てに射撃と格闘術を叩きこまれた女マユミは、
おぞましい快楽を貪る浜崎を討つべく、
難攻不落の陸の孤島“The Room”に潜入する。
体内に埋めこまれた銃だけを武器に…。
(公式サイトから引用)
『サムライ・アベンジャー/復讐剣 盲狼』以来となる光武蔵人監督作。
この作品及び光武蔵人監督との関わりに関しては、
以前、書いた。
【控え室】「光武蔵人監督最新作『GUN WOMAN 女体銃』情報」
リンクの記事を読んでもらえればお分かりかと思いますが、
光武蔵人監督とは、仲良しです。
『女体銃 ガン・ウーマン』にも、脚本の段階で若干関わらせてもらった。
なので、見る前まで、純粋に作品のみの評価は難しいと思っていた。
が、しかし!
完成した作品を見て、“贔屓目”なんてことは、ぶっ飛びました。
純粋に面白い。
光武蔵人監督の映画愛とこだわり、言ってしまうとフェチズム、
更に今、なぜ、この映画が存在するのか?
その意義までバシバシと伝わってきました。
何の説明もないまま、
“いきなりそれ?”と思わずにはいられないシーンから始まり、
その後はステディカムによるワンショットの移動撮影。
まずは名刺代わりというところか?
脚本を読んでいるからストーリーを知っているのにもかかわらず、
この後も作品の世界に引きづりこまれた。
シンプルな復讐劇にみえて、
実はかなり練られた物語そのものに牽引力があるんだけど、
それだけじゃない。
主演の亜紗美の熱演には、目を見張るものがあった。
言葉を発しないマユミの感情の移り変わりをセリフなしで表現している。
特に目力は強い印象を残す。
肝っ玉も据わっている。
今の日本に、血まみれ全裸で本格的なアクションをこなせられる女優が、
他にいるだろうか?
亜紗美の本作にかけた情熱が、色濃く映像に映し出されていた。
その亜紗美を中心としたアクションも見応え十分。
アクションコーディネーターは、田渕景也。
勉強不足で田渕景也のことは良く知らない。
しかし、本作においてかなりのキーマンでしょう。
後半に山場となるファイトシーンが幾つか登場するんだけど、
全て異なるアクションで構成されている。
マーシャルアーツを取り入れた肉弾戦、
それほど長いシークエンスではないものの、
ケレンミたっぷりのキメシーンがふんだんにある銃撃戦に大興奮。
因みに光武蔵人監督はガンマニアで、劇中に登場する銃は全て実銃。
小生はガンマニアではないのでよくわからないけど、
映画祭などで本作を見たその方面に明るい方々から、
本作における銃の取り扱いが素晴らしいという賞賛の声が、
寄せられているとのこと。
一般的なアクション映画ファンだけでなく、
一筋縄ではいかないマニアも納得させてしまうとは、
恐るべし光武蔵人。
前作は刀、本作は銃、次はなんだ?車か?
引き出し豊富な光武蔵人監督のこだわりは、これだけではない。
自然光、逆光、フォーカス、スローモーションなど、
クラシックな撮影技法を多用。
これは撮影監督の今井俊之の功績なのかもしれないが、
作品の世界観に見事にマッチしていて、効果大。
カリフォルニア芸術大学で修士号を取得した光武蔵人監督だからこその、
CGに頼らない従来の映画撮影法へのリスペクトを強く感じた。
決して目新しいテクニックではないかもしれないけど、
CGでいくらでも表現できる時代において、
旧来の撮影技術を用いての演出が、逆に今だからこその輝くを放つ。
われわれの世代は懐かしく思い、
若い世代は新鮮に感じるのでは?
と、こまごま語ってきましたが、お次は全体的な話。
パッと見、血まみれ全裸の女性が主人公ということで、
かなりどぎつくて、怖くて、痛々しい内容をイメージすると思う。
しかし見てみると、それほど過激ではないし、
痛覚に訴えかけてくることもない。
そもそも女性の体内に拳銃を隠すという設定自体荒唐無稽。
本作が馬鹿げた話であることを光武蔵人監督自らが、
見る側に訴えるセリフが、かなり早い段階で出てきたりする。
観客にフィクション前提で見られるような、
ちょっとした配慮がなされている。
一方で、全編に渡りシリアスなトーンが貫かれており、
非現実的な物語なのに、コメディにならない。
説得力がある。
この辺の絶妙な匙加減も凄いなぁと思った。
他にも鳴きのギターが哀愁を誘うディーン・ハラダのスコアも良かった。
エンドロールに流れるテーマソングが、相当かっこよくて、
ちょっと震えた。
あと、光武蔵人監督の盟友であり、
『サムライ・アベンジャー』にも出演している鎌田規昭にも注目。
今回、憎き敵役を演じているんだけど、
倒すべき相手が、強い、キモイ、腹が立つほど、
復讐劇は盛り上がるということを理解したうえで、鬼畜全開。
無駄に長い映画が多い昨今、86分というランニングタイムも素敵だ。
うーん、簡単にまとめるつもりが、やはり語るべき点が多く、
結局長くなってしまった。
とにもかくにも、光武蔵人監督を中心として、
志の高い同志が集まり、愛を持って作りあげた血と涙と汗の結晶。
それがスクリーンからヒシヒシと伝わってくるのです。