たまには本の紹介をしましょう。
2014年9月2日に発売された恒川光太郎「スタープレイヤー」。
2001年3月、突然目の前に現れた男にくじを引かされ、
一等賞を当てた斉藤夕月(34歳・無職)。
フルムメアが支配する異世界へ飛ばされ、スタープレイヤーに選ばれた夕月は、
スターボードに入力することで「10の願い」を叶えることができる力を与えられる。
案内人の石松から説明を受けて衣食住を調えた夕月は、
私的な欲求を満たすために「10の願い」を消化するが、
ある日、マキオというスタープレイヤーと出会ったことで、
新たな世界を知り、かつて抱いたことのない意識が芽生え始める。
そして、夕月は、想像を絶する事態に身を投じることになる。
果たして夕月は、異世界で「10の願い」をどう使い、どのように生きて行くのか?
あらすじを読んで頂ければわかるかと思いますが、ファンタジーです。
眼精疲労で読書率低下中だが、
読書は好きで年間それなりの数の本を読んでいる。
しかし、どうもファンタジー小説ってのが苦手なんだよね。
ルールなしの何でもありな世界観になりがちだし、
非現実な世界だから頭の中にイメージが浮かび難く、
読み進めるのがしんどい。
故に触手が伸びないジャンルだ。
でもこの「スタープレイヤー」は、
そんなファンタジー嫌いをものの数ページで、本の世界に引きずり込んだ。
異世界が舞台なわけですが、、
なんとなく脳内シアターにイメージが浮かび読み易い。
「10の願い」が叶えられるが、
ちゃんとルールがあり、ご都合主義的な展開もない。
そして、何よりも物語が壮大で面白い。
本書の宣伝キャッチに「光と闇、生と死、善と悪、美と醜」とあるが、
まさにその通りで、表裏一体の事象を巧みに取り入れ、
物語に奥行きをもたらしている。
久しぶりに本を一気読みした。
ということで、オススメの一冊なわけですが、
“作家”恒川光太郎の存在を知ったのは、実は昨年のこと。
小・中の時の同級生と久しぶりに会い、
同学年の友達たちの近況を教えあっていた。
「S野は、立川のラーメン屋で働いている」
「S本は、外科医になった」
「H澤は、登戸で塾講をやっている」
などなど、懐かしい名前が沢山出てきた。
そして・・・、
友達「そうそう光太郎が作家になったのは知っているよね?」
小生「光太郎って、恒川光太郎?」
友達「そうだよ。恒川光太郎だよ」
小生「まじで?作家になったの?」
友達「数年前にデビューして、賞とかとっているよ」
恒川光太郎が、作家になっていたとは!
中学生の時の旧友、恒川光太郎は知っていた。
しかし、作家としての恒川光太郎は知らなかった。
本ブログの【散策の部屋】の「海」シリーズに、
Mッチという女性が度々登場します。
「海 2011」
「海 2012」
「海 2013」
Mッチは、かつて映画情報番組の制作に携わっていて、
小生が映画の宣伝マンをしていた頃に出会って以来、
もう10年以上の付き合いになる友人だが、今は某出版社に勤めている。
Mッチなら職業柄、恒川光太郎のことを知っているかもと思い、
すぐさま「恒川光太郎を知っているか?」とメールすると、
「知っているに決まっているじゃないの」という返信が。
「中学時代の同級生だった」と伝えると、
「それは驚き!というか、知らなかったの不味くない?」というお答え。
確かに!
早速、本屋へ行きデビュー作「夜市」を購入して読破。
第12回日本ホラー小説大賞受賞作だが、ホラー小説ではない。
ホラー的な要素もあるけど、怖くはない。
ファンタジー色もあるにはあるが、
そこまでファンタジーしていない。
ジャンル分けが難しい独特の世界観があった。
「夜市」も面白かったが、併録の「風の古道」はもっと良かった。
小金井公園、多摩湖サイクリングロード、
彼の母校である学校の近くと思われる場所が登場する。
なんとなく懐かしい、不思議な気分にさせてくれる。
「夜市」「風の古道」の幻想的な世界観は、
映画『雨月物語』を思い起こさせる。
恒川光太郎の頭の中には、こんな世界があったのか?
と、驚かずにはいられなかった。
第12回日本ホラー小説大賞を受賞した「夜市」以降も、
活動目覚ましく、山本周五郎賞に3度も候補になっている。
小生の同級生が山本周五郎賞の候補だよ。
スゲェー。
そして、今年「金色機械」で第67回日本推理作家協会賞を受賞。
マジでスゲェー。
まぁ、オイラは恒川光太郎の躍進に何も寄与しておりませんが、
中学時代の同級生が、作家として大活躍しているのは、
嬉しいし、誇りに思う。
恒川光太郎が気鋭の作家になっていて、
賞の常連ということに驚いたわけですが、
さらなる驚きが待ち受けていた。
なんとMッチが、「スタープレイヤー」のパブリシティ担当に!
なんという巡り合わせ!!
手元にある「スタープレイヤー」は、
Mッチから贈呈されたもので、恒川光太郎のサイン入り。
中学時代の旧友のサイン入り本を10年来の友人から貰うという、
なんとも奇妙なこととなりました。
Mッチは、「スタープレイヤー」の宣伝担当ですから、
当然、恒川光太郎とも会うわけでして、
その際に、小生のことを話したという連絡が。
そのことについて、恒川光太郎がブログに書いていた。
「コウタライン」
このブログに登場するMちゃんというのが、ワタクシです。
「伊藤一之なのにMちゃんってのはおかしいだろう」
とお思いになるかもしれませんが、
家庭の事情により、大学2年生の時に養子縁組をしまして、
当時Mの付く苗字から伊藤に変わったのでした。
「スタープレイヤー」にマキオという人物が登場するけれど、
ある一部の人からはマキオと呼ばれていたことがあったなぁ。
恒川光太郎は沖縄在住なので、
Mッチを介したとしても、中々会うことは出来ない。
しかし、いつの日か酒でも飲みたいものだ。