高倉健さんが亡くなった。
多くの方々が、健さんに哀悼の意を表している。
2014年11月19日丸の内TOEIの献花式。昼休みに行った。
小生は洋画で育った人間なので、
『ザ・ヤクザ』、『ブラック・レイン』、
『ミスター・ベースボール』といった洋画は見ているけど、
“高倉健主演”の邦画は、数える程度しか見ていない。
故に、健さんについて語る資格もはないのですが、
かつて割と身近なところで“男、高倉健”を感じる機会があった。
そのエピソードを綴りたいと思います。
今から14年前の2000年、映画宣伝マンの仕事をしていた頃のお話。
この年、クリント・イーストウッド監督・主演作『スペース・カウボーイ』が公開された。
本作の宣伝を請け負っていたのが、小生が勤務していた映画宣伝代理店。
その当時、著名人から映画の感想コメントをもらい、
新聞の広告等に載せることが流行していた。
SNSはおろか、ブログすらない時代。
オピニオンリーダー的な方々の発言は、映画興行の行方を大き左右した。
で、『スペース・カウボーイ』も公開に際し、
著名人からコメントを頂戴することに。
イーストウッド、トミー・リー・ジョーンズ、ドナルド・サザーランド、
ジェームズ・ガーナーといった名優たちが、かつて宇宙飛行士を夢見たおじ様に扮し、
宇宙に行くという男気溢れる内容をうけ、高倉健さんからコメントを貰おうという話になった。
そこで、宣伝プロデューサーがつてを頼って、
(おそらく)高倉プロモーションに打診したところ本編を見てから判断となり、
結果、鑑賞後、快諾。
後日、健さんの『スペース・カウボーイ』に対するコメントがFAXで届いた。
流石に14年も前の出来事なので、そのコメント内容は覚えていないんだけど、
高倉健という大物俳優からコメントをもらえたことに大興奮した。
ポスターを見るとほぼ一枚看板。やはりスターだ。
ところが、健さんのコメントの文字数が多く、
長いということで、少々削ることになった。
そして、公開日前日の夕刊に、
健さんの添削済コメントが入った『スペース・カウボーイ』の広告が掲載された。
確か、公開後、初の営業日だったかと思うんだが、
オフィスに『スペース・カウボーイ』の宣伝プロデューサー宛に一本の電話がかかってきた。
なんと高倉健さん本人から。
直接電話に出たわけではないので、その内容の全ては分からないけど、
宣伝プロデューサーと高倉健さんが、電話で話しているのを目の前で見ていた。
宣伝プロデューサーは、ひたすら受話器を持ちながら頭を下げていた。
電話を切った後、宣伝プロデューサーに話を聞いた。
健さんは、『スペース・カウボーイ』を見て感銘を受け、
作品の良さを伝えたい、多くの人に見てもらいたいという思いから、
熟考に熟考を重ねたうえでコメントを綴った。
にもかかわらず、新聞の広告を見たら削られていた。
一生懸命考えて作った文章を無断で削除するとは何事かという抗議の電話だった。
確かにコメントを勝手にいじった側に落ち度があるのですが、
まさか本人から直に電話がかかってくるとは・・・。
ぶっちゃけ、コメント料なんてたかだか数万円なんですよ。
健さんクラスだったら、小さいお仕事です。
やっつけでも良いし、代理人に任せてしまっても良いレベル。
しかし、“男、高倉健”は、仕事の小さい、大きいは関係ない。
受けた仕事は、全て真摯に向き合う。
そんな男の美学を見せつけられ、
やっぱり“健さんはカッコイイ!”って思った。