『映画クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃』
2016年4月16日より全国東宝系にて
配給:東宝
©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK2016
____________________________________________________________
ある晩、就寝中の野原ひろしは、
自分がヒーローとして活躍する幸せな夢を見ていた。
しかし、それも束の間、
不気味で巨大な魚が現れ悪夢へ突き落とされる。
同じく、みさえ、しんのすけ、ひまわりも楽しい夢を見ていたが、
その夢は、悪夢へと姿を変える。
その頃、春日部の街にサキという名の少女が引っ越してくる。
風間くん、ネネちゃん、マサオくん、ボーちゃんたちカスカベ防衛隊が、
仲良くしようと声を掛けるも、全く打ち解けようとしないサキ。
やがて春日部の住民たちは、何でも叶う夢の世界へと誘われるが、
それは悪夢の始まりでもあった。
そして、サキはその悪夢と大きな関わりを持っていた…。
お馴染み「クレヨンしんちゃん」の劇場版第24作目。
結論から言うと、大好きですね。
歴代劇場版「クレしん」の中で、5本の指に入るかも。
キャラクターの活躍の配分、ギャグの散りばめ方、
物語の展開、テンポの良さなど、トータルバランスが素晴らしい。
劇場版「クレヨンしんちゃん」は、
野原一家かカスカベ防衛隊のどちらかが活躍するパターンがほとんど。
今回はカスカベ防衛隊の方にウェイトがあるにはあるが、
野原一家も活躍する。
劇場版になると影が薄くなるひまわりも大活躍だ。
(ひまわりメインの『嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス』は駄作だった)
ついでにいうとシロも、ひまり程ではないが、
劇場版となるとあまり活躍の場を与えられない。
シロ主役の『嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!』ってのもありましたが、
もう9年も前の作品だ。
そんなシロの出番も多い「爆睡!ユメミーワールド大突撃」は、
とはいえ、カスカベ防衛隊メインであり、それぞれのキャラクター性を活かし、
要所を締めてくれる。
カスカベ防衛隊の友情にグッとくる。
しかし、それ以上に心揺さぶられるシーンがあった。
それは、みさえの某シーン。
恥ずかしいから大きな声では言えないが、
家で見ていたら声出して泣いていたと思う。
これまでも劇場版「クレしん」で泣いたことはあったが、
ブッ刺さり度は、『嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』、
『嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』の次ぐらいかも。
なんかね、母親って偉大だなぁって。
母親と父親の子供の接し方の違いを、
男親だったらグサッとくるようなセリフでぶち込んでくる。
きっとこれが母性なんだろうなぁ。
『エイリアン2』でした。
この他、園長先生、よしなが先生、まつなが先生、上尾先生は勿論のこと、
ミッチー&よしりん、ななおこおねえさん、ヒロシの部下の川口、
幼稚園児のチーター河村といった、
劇場版だと登場する機会が少ないレギュラー陣もしっかり出てくる。
(酢乙女あい、隣のおばさんこと北本さんにもご登場願いたかったが…)
個性豊かなキャラクターがたくさんいるのが「クレヨンしんちゃん」の強みであり、
それを活かさないと宝の持ち腐れだ。
あと、劇場版「クレヨンしんちゃん」は、
初期作品から不気味なホラー要素が盛り込まれることが多々あり、
本作も恐怖心を煽るようなシーンが沢山ある。
しかしながら、ホラーテイストが入ると、
すぐさまギャグを放り込んできて、緩和させてくれる。
この手の手法は、過去の劇場版「クレヨンしんちゃん」作品にもあったけど、
今回は特に自然な流れで、あまりギャグを無理矢理入れた感はない。
監督は高橋渉。
2013年『バカうまっ!B級グルメサバイバル!!』橋本昌和監督
2014年『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』高橋渉監督
2015年『オラの引越し物語 サボテン大襲撃』橋本昌和監督
という順番なので、最近は橋本昌和と高橋渉が交互に担当している。
劇場版「クレヨンしんちゃん」は、
この所、1人の監督が2〜3本撮って交代が多かったので、珍しいケースだ。
とはいえ、両監督の作品はどれも秀作なので、何ら問題はない。
高橋渉監督は脚本も担当しているんだけど、
もう一人共同脚本を務めている人物がいる。
実はこの人物が本作のキーパーソンであり、
全体のバランスを整えてくれたんじゃないのかと勝手に思っている。
劇団ひとりだ。
『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』で、
劇団☆新感線の中島かずきが脚本を手がけたことはあったが、
歴代劇場版「クレヨンしんちゃん」で畑違いの人物で、
しかもお笑い芸人が、脚本に携わったことはない。
芸人である以上、笑いへの追求はマストでしょう。
「クレヨンしんちゃん」は、基本ギャグ漫画だ。
芸人である以上、笑いに対してストイックであるはず。
故に上手くギャグを散りばめられたのかなと。
それから劇団ひとりは父親だ。
2010年9月8日に奥さんの大沢あかねとの間に子供をもうけている。
子供は5歳ぐらいなんで、しんのすけたちと同じ年頃。
日々の日常生活の中からヒントを得て、
脚本の中に取り入れていったのでは?
先述の小生がいたく感動したみさえの某シーンのセリフは、
多分、子供のいる家庭を知る人じゃないと書けないと思うんだ。
だからリアルであり、説得力を生んだのでは?
1998年以降、長らくアニメの「クレヨンしんちゃん」に携わり、
その世界観を熟知している高橋渉監督と新参者の劇団ひとり。
ベテランと新人の「クレしん」に対する情熱が、
化学反応を起こした結果が本作。
つまらん映画は睡魔との戦いの末、負けて爆睡となるが、
「爆睡!ユメミーワールド大突撃」は、眠気も吹っ飛ぶ良質な娯楽作でした。