2016年10月01日更新

2016年9月29日 三代目 橘家文蔵 襲名披露興行@鈴本演芸場

橘家文左衛門。


好きな噺家の一人。
(因みに年は異なるが、誕生日が一緒という御縁もある)





強面でヤ○ザのような風貌。
博打と酒が大好き。


でも優しさと情に訴える何かがある。


随分前だが、文左衛門の「子別れ」を聴いた。


スゲェ沁みた。


「子別れ」は、自身のしくじりによって、
妻と子供と別れることになった男が更生し、
3年後に妻子と出会いよりを戻す人情劇。


文左衛門に離婚の経験があるかどうかは知らないけど、
酒好きならば、酒で失敗してしまう男の気持ちは、理解できるはず。


同じ噺でも噺家によってまるで変わる。


なぜならば、噺家の了見が滲み出るから。


文左衛門の「子別れ」は、なぜ良かったか?


その要因を考察してしまう。
好きな噺家じゃないとそこまではしない。


落語ネタをこのブログにアップするのは、2013年9月以来だが、
この間、落語はちょいちょい見に行っている。
(映画館に行くよりも多い)


その中には文左衛門が高座に上がった落語会、寄席もある。


落語を見に行く際に、誰が出るかは重要で、
文左衛門は、私が会場に足を運ぶ理由になる。


そんな文左衛門が、師匠である文蔵の名を襲名することになり、
9月21日から鈴本演芸場を皮切りに11月10日の国立演芸場まで、
三代目 橘家文蔵襲名披露興行を行っている。


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上野にある鈴本演芸場の最終日の前日、
9月29日(木)の夜の部を見に行った。


素晴らしい会だった。


圧巻は仲入り後の襲名口上。


幕が上がると下手から、


入船亭扇辰
柳家喬太郎
柳家権太楼
三代目橘家文蔵
柳家さん喬
鈴々舎馬風(れいれいしゃばふう)
三遊亭金馬


スゲェ面子。


落語ファンじゃないと、どれだけ凄いかは分からないかもしれませんが、
とにかく凄いんです。


落語界の重鎮揃い踏み。


マイケル・シェンカー
ジェフ・ベック
ジミー・ペイジ
エリック・クラプトン
リッチー・ブラックモア
カルロス・サンタナ
キース・リチャーズ


上記、現役ギタリストが同じステージにたった感じ。


えっ?全然わからない?


じゃぁ、


キーファー・サザーランド
トム・ハンクス
アンソニー・ホプキンス
ロバート・デ・ニーロ
ダスティン・ホフマン
ジャック・ニコルソン
マックス・フォン・シドー


上記、俳優が同じ舞台に立ったイメージ。


えっ?全然違う?


さて、口上。


文蔵よりも後輩の扇辰さんが、
やり難いといいながら司会を務め、順番に口上。


それぞれが文蔵への思いを面白おかしく話す。


喋ってナンボの世界に生きる方々。
抜群の話術。


鈴々舎馬風が、
三遊亭金馬以外は、全員が人間国宝・故五代目柳家小さんの一派だという。





勉強になるわけですが、
橘家と柳家って師弟関係あるのか?


気になって調べた。
文左衛門の師匠・二代目 橘家文蔵は、八代目林家正蔵に入門し、
真打になった際に、林家勢蔵から橘家文蔵に改名。


八代目林家正蔵は、四代目橘家圓蔵の弟子になるも(その前に紆余曲折があるが割愛)、
圓蔵の死去に伴い三代目柳家小さんの預かり弟子となっていた。


まぁ、そんなこと知らないよね、普通。


口上の最後は、観客も一緒に3本締め。


トリの文蔵までのプログラムは以下の通り。


落語 柳家喬太郎:「饅頭怖い」
曲芸 太神楽曲芸 鏡味仙三郎社中
落語 鈴々舎馬風:「男の井戸端会議(噺家や時事ネタを面白可笑しく語る)」
落語 三遊亭金馬:「長短」
仲入り
襲名披露口上
漫才 ホンキートンク
落語 柳家権太楼:「鶴」
落語 入船亭扇辰:「茄子娘」
粋曲 柳家小菊:三味線+歌


落語はどれも素晴らしく、
それぞれの味が出ていた。


中でも金馬さんは、87歳とは思えない。
生気溌剌。


権太楼は、口上の席で、
62歳で亡くなった先代の文蔵よりも長生きをして欲しいと言っていた。


だから長寿の象徴である鶴が出てくる「鶴」をやったのかな。


曲芸、粋曲は寄席じゃないとまず見る機会がないので、
日本の伝統文化として楽しむ。


20時40分。


いよいよ橘家文左衛門改め、三代目 橘家文蔵が、
出囃子に乗って登場。


すると上手側がうるさい。


偉い人たちはみんな帰ってしまって、
楽屋に残った人たちが、宴会モードになってしまったと。


「俺も飲みてぇ。飲みたいっすねぇ…」と思わず漏らす。


上手には「文蔵」という銘柄の一升瓶が数本置かれている。


熊本の焼酎で、お祝いにって送って来てくれたとのこと。


「日本酒は樽だけど、焼酎は甕なんですってね。
 甕に文蔵って貼ってあると、
 死体が入っているみたいだから一升瓶なんですよ」


続いて、背後に張られた横断幕を紹介。
サイコロが描かれているのが笑える。


そして、「本当はダメだけど、せっかくですから写メの時間にしましょう」と、
急遽撮影会が始まった。


座布団の上でいろいろポーズを取るお茶目な文蔵54歳。


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さらには、楽屋で盛り上がっている人たちを呼び込んで記念撮影。


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中には本当に酔っぱらっている人も。


扇辰さんは若々しいラフな格好なのに対して、
喬太郎ことキョンキョンは、超ダサイ、オッサンの出で立ち。


蛭子能収かと思ったぞ。


「みんな酒くせぇ!早く俺も飲みてぇ」


ってことで、酔っぱらい連中が去った後、「猫の災難」。


隣から鯛の頭と尾を貰ったが、一文無しで酒が買えない熊さん。
そこに懐が温かい兄貴がやってくる。


鯛が一匹あると勘違いした兄貴は、酒を買ってくる。


今更、鯛の身がないとはいえず、
三枚に下ろしたら、隣の猫に持っていかれたと誤魔化す。


ならばと兄貴は今度、鯛を買いに行ってしまう。


一人残された熊さんは、ちょっとだけと酒を飲み始めるが、
結局全部飲んでしまい…。


いやー、面白かった。


有名な噺で、流れやサゲ(オチ)も知っているが、楽しめた。


流石は文蔵、貫録の一席。


ちょいと一杯のつもりで呑んだものの、
止まらなくなってズブズブと。


酒好きアルアル。


次第に酩酊していく熊さんを文蔵が、嬉々として演じる。


注ぐときに誤って畳にこぼしてしまった酒を、
土下座の格好で畳に口を付けて啜る。


それでも足らず、畳を叩いて浸み込んだ酒を浮き出して啜る。


大爆笑。


楽屋では宴会。
祝いの焼酎。
酔っぱらた仲間と舞台で記念撮影。
自身も酒飲みたい。


この流れで酒の噺をやるのは必然のように思えたが、
後で調べたら、元々上方落語だった「猫の災難」を、
東京に移植したのは、三代目柳家小さんだった。


粋だねぇ。


熟練の噺家が集っただけあって、
どの落語も素晴らしかった。


これぞお祝いってな雰囲気もハレな感じも、
普段の寄席とちょっと違っていて居心地が良かった。


そして、これからも文蔵をお目当てにして落語へ行こう。


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ハネ太鼓が気持ち良い。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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