#722『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン 〜失われたひろし〜』
『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン 〜失われたひろし〜』
2019年4月19日(金)より全国にて
配給:東宝
©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK2019
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(今更の)新婚旅行のため、
オーストラリアの秘境“グレートババァブリーフ島”を訪れた野原一家。
ひろしとみさえは、特別の一時にしようとするが、
既に結婚して数年、新婚の域を過ぎているからか
微妙なすれ違いが重なり夫婦喧嘩をしてしまう。
ひろしはひとり自棄酒、みさえはホテルの部屋でご立腹。
やがて、互いに些細な諍いが間違っていたと気が付くが、
ひろしが島に住む仮面族に拉致されてしまい…。
「クレヨンしんちゃん」の劇場版第26作目。
監督は橋本昌和。
2013年『バカうまっ!B級グルメサバイバル!!』橋本昌和監督
2014年『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』高橋渉監督
2015年『オラの引越し物語 サボテン大襲撃』橋本昌和監督
2016年『クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃』高橋渉監督
2017年『映画クレヨンしんちゃん 襲来!!宇宙人シリリ』橋本昌和監督
2018年『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ 〜拉麺大乱〜』高橋渉監督
2013年から続く、橋本昌和監督と高橋渉監督の交代制が継続。
両監督とも安心・安定のクォリティを維持してきていたが、
本作も同様に中だるみ無し、
老若男女を問わず楽しめる作品となっている。
子供が喜ぶアドベンチャー要素満載だし、
これまでの劇場版「クレしん」がそうであったように、
タイトルそのまんまの『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』を筆頭に、
『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』『トゥームレイダー』、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』、
『キングコング』などなど、映画ファンが喜ぶ様々なオマージュが込められているのも嬉しい。
いつも通り劇場版ならではの荒唐無稽なファンタジーアクションコメディなんだけど、
ひろしとみさえが陥る倦怠ムードの描写とかはリアルで説得力がある。
この辺の非日常と日常の塩梅が、
子供だけでなく大人をも虜にする「クレしん」の強味だと思う。
さて、昨年から今年にかけて「クレしん」は大きな転機を迎えました。
それは、野原しんのすけの声優が、矢島晶子から小林由美子に代わったこと。
小林由美子が初めてしんのすけの声を担当した回を録画し忘れ、
ネットに上がっていた動画を少し見た程度で、
まともに小林由美子版「クレヨンしんちゃん」を見ていなかった。
ネット上の動画を見る限り、あまり違和感を覚えなかったので、
さほど心配はしていなかったんだけど、
小林由美子は、矢島晶子が作り上げたしんのすけ像を見事に継承していた。
ひろしも藤原啓治から森川智之にスイッチし全く問題なかった。
「クレしん」の声優交代は、ほかのアニメの声優交代よりも、
スムーズにいっているように思う。
(大山のぶ代で育ったので、未だに「ドラえもん」は馴染めない)
「クレしん」のアニメがスタートしたのが1992年。
劇場版は1993年から。
既に28年の歴史を誇る長寿アニメですから、
声優さん交代を筆頭に様々な変化があって然るべきかなと。
そして、本作を見てすぐに、
これまでにあったある要素が無くなっていることに気が付いた。
それはみさえのしんのすけやひろしに対する“お仕置き”。
みさえはしんのすけがおバカなことをすると、
グーパンチでの後頭部殴打、こめかみグリグリ、
お尻ぺんぺんといったお仕置きをよくしていた。
ほかの女性に鼻の下を伸ばすひろしに対しても、
ゲンコツを見舞ったり、顔を引っ掻いたりしていた。
今回、みさえによるこれらの描写は皆無。
なぜか?
目黒(2018年3月)、千葉県野田市(2019年1月)で起きた女児虐待死や、
大やけどを負った3歳の女児をラップに巻いた状態で置き去りにする(2019年3月)など、
この1年間で衝撃的な児童虐待事件がいくつかあった。
全国の警察が2018年に児童相談所に通告した18歳未満の子供は80,104人で、
前年より22.4%増の過去最多。
また、DVというと女性が男性から受けるイメージがあるが、
女性が男性に対して行うケースも増加している。
警視庁の統計によると男性からの相談件数は、
2013年の79件から年々激増し、
なんと2017年には1,416件にも及ぶ。
女性の被害者も増加傾向にあるが、
DV被害は女性に限ったことではないことがわかる。
みさえによるしんのすけやひろしへのゲンコツとかグリグリとか、
個人的には虐待だとは思いませんが、
今のご時世、何言われるかわかりませんから、
制作陣が自粛をしたのでは?
「映画は時代を表す鏡」とはよく言われるが、
「クレれしん」もご多分に漏れず?
(むしろファミリー向けなので敏感なのかも)
そんな“お仕置き”を封印したみさえですが、
本作での奮闘ぶりは凄いです。
妻として母として、そして女として、
喜怒哀楽をまき散らしながら、
夫への愛と子供たちへの母性を貫いて大活躍します。
近くで見ていたおそらく未婚であろう女性が、
鑑賞後「ちょー泣けた」という感想を述べておりました。
多分、みさえと同化し、共感しまくったのでしょう。
小生は男だし、すでにオッサンなので、
泣くほどはみさえに共感できません。
しかなしながら、男として言えることは、
ひろしは幸せだね。
みさえという素敵な生涯の伴侶を得ることが出来て。
ちゅうことですね。