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「メタリカだって人間なんだ」

#84

 メタリカ。別にハードロック/ヘビーメタルのファンでなくても、その名前は一度ぐらい聞いたことがあるであろうロックバンド。

 メタリカはジェームズ・ヘットフィールド(Vol、g)とラーズ・ウルリッヒ(dr)が中心となって結成されたバンドで、音楽の特徴はエッジの効いたギターと重厚なドラムスが織り成すパワフルな疾走感。それはスラッシュメタルと呼ばれ、1980年代の中頃から頭角を現す。

 その後、ベーシストの事故死などの不運に襲われるも、1988年のアルバム「...AND JUSTICE FOR ALL」収録の「ONE」でグラミー賞を受賞。更に1991年に発表した「メタリカ」が全米No.1の大ヒット。この作品はヘビーメタルだけでなく、その後のヘビーサウンドの方向性を決定付ける歴史的アルバムだ。以降、出すアルバムは全てヒット、ツアーも満員。1990年代、メタリカはモンスターバンドとして君臨した。

 そんなメタリカが2001年に開始した新作アルバム(「SAINT ANGER」2003年発表)の制作過程を追ったドキュメンタリー映画「メタリカ:真実の瞬間」が公開される。

 2001年は丁度2代目のベーシストが自分の立場に不満を持ち脱退したばかり。残った各メンバーも情緒不安定、それぞれの関係には亀裂が走り、最悪の状態。セラピストを雇い、スタジオの環境も整えアルバム制作に入るも、改善する兆しは見えず。特にジェームズは重症。元々アルコール依存症もあり、スタジオから姿を消してしまう。バンドはアルバム制作どころか、解散の危機に直面する。。。

 伊藤Pは高校時代からメタリカ・ファンなのですが、とにかく凄いドキュメンタリー映画でした。メンバー間の確執、ミュージシャンとしてのプレッシャー、音楽を産むこと、そして家庭と仕事の両立の難しさに苦悩する姿がこれでもかと映し出され、ステージの上でアクティブに吼え、絶対王者として振舞う姿しか見たことがない伊藤Pには衝撃的だったのですが、その衝撃以上にこの作品からは感動を得ました。

 この映画でメタリカは成功したロックスターではなく、生身の人間として映し出され、我々と同じようにもがき悩み苦しむ。そして、なんとか状況を打開しようとするメンバーたちの姿。それを乗り越えたときに見えてくるものは。。。

 伊藤Pは本作で制作過程が描かれたアルバム「SAINT ANGER」を初めて聴いたとき、余り好きになれなかった。なぜこんなにも「怒り」に満ちているのかが理解できなかった。でもこの映画を見て改めて聴いたときに、魂を削ってまで作り上げたメンバーたちの思いを確実に感じ取ることが出来ました。そして、その「怒り」もなんだったのかが判りました。

 確かに伊藤Pはメタリカのファンであり、感情移入しやすいという贔屓目はありますが、メタリカというバンドメンバー各々が自分と戦い、人と戦い、突き進んでいく姿は、別にメタリカを聴いたこと無い人でも、メタリカが嫌いな人でも十分に刺さると思います。

 「音楽映画の枠を超え、観るものすべてに生きる力、仲間と共に明日を戦う勇気を与えてくれる感動のヒューマン・ドキュメンタリー!」

 この映画の宣伝コピーなのですが、まさにこの通りです!

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