映画の宣伝方法にメディア・ミックスというのがある。
映画宣伝の際、テレビ、出版物など様々なメディアに絡めて立体的に展開する方法。要は多角的に露出し、多くの人々に認識してもらうための戦略だ。
この手法を大々的に取り入れたのが角川春樹氏。1976年、角川書店出版の原作「犬神家の一族」を映画化した時にテレビ、出版物への露出、テレビCM(スポット)、駅貼りなどへの広告出稿など、様々なメディアへの大量宣伝戦略を展開し一世を風靡した。
伊藤Pは当時まだ赤ん坊だったので、リアルタイムでは接していませんが、その頃を知る人たちにとって、それそれは強烈なインパクトだったそうな。
このメディア・ミックスは、その後の映画宣伝の方法を変えたと言われるほどエポックな出来事で、80年代のフジテレビ印の「南極物語」や「子猫物語」などテレビとの密接な関係構築の礎となったし、宮崎駿監督作品に見られる映画+テレビ局+出版社+キャラクター商品販売もこれに当たると言えるでしょう。
そして、現在。この手法は今までのやり方を踏襲しつつ、時代の流れに乗って、30年前には存在すらしなかったメディアを取り込みながら、進化をし続けている。※注意:ここで言うメディアは広義的な解釈で、マスメディアだけでなく、情報伝達媒体とします。
例えば、DVD。原作がロングセラーを記録した「子きつねヘレン」(公開中)では、公開前に、映画が出来るまでを克明に追ったナビゲートDVD「子きつねヘレンができるまで」というDVDを発売し、原作ファンの注意を喚起している。他にも映画の公開時に合わせて、関連DVDを出したりするケースは結構ある。
ゲームというものある。ゲームの映画化ではなく、映画と連動してゲームを作るパターン。「亡国のイージス」では公開時に「亡国のイージス
2035 ウォーシップガンナー」というゲームが発売された。映画の30年後を描いたゲームで、小説の原作者福井晴敏氏が、ストーリーを書き下ろしている。
「亡国のイージス」に至っては、他に映画化の進行に合わせて、関連書籍本の刊行やコミック化もしており、様々な層にアピール出来るように、あらゆるメディアを多用している。
小説を映画化する際にコミック化したパターンは、「バトル・ロワイヤル」も挙げられる。「亡国のイージス」も「バトル・ロワイヤル」も原作は結構なページ数。よって、コミック化というのは、活字離れした人たちを取り込むのに最良の手段なのでしょう。
そして、良く使われるのはネットで、回線が太くなり、簡単にパソコンでの映像視聴が可能となった今、ネットとの絡め手はもう当たり前。
昨年公開され、本コラムでも触れた「探偵事務所5”〜5ナンバーで呼ばれる探偵達の物語〜」(#95)は、インターネットで本編に絡むサイドストーリーを配信するという手法を取っている。
そして、同じように5月27日公開のホラー映画「水霊
ミズチ」もネットに絡めた展開を計っている。悪霊に汚染された死水がもたらす恐怖を描いた本作は、細かい部分がやや説明不足で、消化不良かな?と思わせる。しかし、実はそれが狙いで、メインの井川遙と渡部篤郎以外の重要脇役キャラを主人公にしたアナザーサストーリーを、公開前にYahoo!JAPANで配信(5/11〜)。
アナザーストーリーをネットで見てから映画を見ると、より映画をより一層理解できるし、映画を見てからアナザーストーリーを見れば、もう一度映画が見たくなるという図式だ。映画にとってもYahoo!にとっても嬉しいという相思相愛の関係。なるほど、通りで劇中頻繁にYahoo!が出てくるわけだ(出資もしている)。
そんな「水霊」は更なるメディア・ミックスをみせる。それはT-SHIRT-YA.COMとのコラボです!映画をイメージしたTシャツを発売するということで、デザインを見てみるとコップが描かれている。
果たしてその意味は...?
それは映画を見れば判ります!
何々、Tシャツがメディアかって?充分メディアなんですよ。これ(#100)を読めばその力が少しはご理解頂けるかと思います。
あと、T-SHIRT-YA.COMで販売するということは、確実にネットに載るということですんでね。
ということで、今回は様々なメディア・ミックスについて触れてみました。少しでもウンチクのネタになって頂ければこれ幸い。
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