良く体当たり演技という言葉を耳にします。
男優さんよりも女優さんに、そして、特に大胆な濡れ場を演じた際に使われることが多い表現。
伊藤Pは“脱ぐだけ=体当たり演技”という考えには否定的です。脱ぎに必然性があって、それに裏打ちされる何かがないとね。だったらAV女優はみんなそうやん。などという屁理屈をのたまいたくなってしまう。
体当たり演技とは脱ごうが脱ぐまいが「全身全霊で演技に打ち込む」こと。尚且つ「それが見る者に伝わっている」ことも重要だと思う。
例えば、ジャッキー・チェンの映画に出てくる女優たち。彼女たちは有名であっても、危険なスタントシーンを自らこなさなくてはならない。今や大女優格のマギー・チャンだってかつては「ポリス・ストーリー」シリーズや「プロジェクトA2」で危険なスタントに挑んでいる。これも体当たり演技の1つ。
そう言えば、「最近あまりスゲー体当たり演技を日本映画で見ていないなぁー」と思っていたら、スゲーのに出くわしました。
それは「嫌われ松子の一生」。
監督は中島哲也。サッポロ黒ラベルのCMで超スローモーション用い、山崎努VS豊川悦司を演出し、映画ではロリータとヤンキーの友情を描いた「下妻物語」を撮った方といえばお分かりでしょう。
元々、我々が俳優に対して持つ既成のイメージを覆して、新鮮味を出したり、女優が持つ個性を強引なまでに強調し、突き抜けさせるのが巧いのですが、今回は中谷美紀さんを壊した。
その壊し方は尋常ではありません。
伊藤Pはこの映画を見て彼女のイメージが良い意味で完全崩壊しました。
本作品は、中谷美紀さん演じる川尻松子の波乱万丈な壮絶なる一生をポップに描いているのですが、中谷美紀さんの演技は「ここまでやるか!?」の連続で、その真摯な姿勢に感動を覚えました。その演技は松子の一生を体現しています。
こういう演技が真の体当たり演技だと思う。
果たしてどんな体当たり演技を見せたのか?その衝撃は是非劇場でご確認頂きたい。
そして、今回、昨年の「力道力」に続き、幸運にも中谷美紀さんに再びインタビューする機会を得た。インタビュールームに共演者の伊勢谷友介さんと入ってくるや否や、こちらから聞くとも無しにその壮絶なる撮影秘話を話してくれた。
どれだけ過酷だったのか?
それはカミングスーンTVの番組「シネマ★インタビュー」#11(5/22〜5/28)での中谷さんのインタビューをご覧頂きたいのですが、更に詳しくという方は、彼女が撮影の日々を日記風に綴ったエッセイ本、「嫌われ松子の一年」を是非読んで頂きたい。
「嫌われ松子の一年」中谷美紀著
発行・ぴあ株式会社 定価:\1,365(税込)
発売中
(注)結構、映画の内容に触れている部分が多いので、
映画を見てから読んだ方が良いかも知れない。
読めばもう一度見たくなるしね。 |
監督とのバトルやその時の心情、撮影を終えた瞬間の気持ち、その他多くの苦労話がかなり赤裸々に語られているだけでなく、現場の雰囲気やちょっとした業界用語解説、中谷美紀さんの女優としてのスタンス、更には日頃の食生活、習慣にまでも話は及びかなり興味深い内容となっている。
バトル、苦労話と聞いてヘヴィーに感じるかもしれませんが、あくまでエッセイですから、軽妙な語り口でサラリと読めます。
伊藤Pは映画見て、中谷さんから直に話を聞いて、このエッセイを読んで、中谷美紀という女優というか人がスンゲー好きになりましたよ。
映画トータルで見ると、映像とテイストが激しく独特なので、好みが分かれてしまうかも知れませんが、テーマ性、ヴォリューム感、キャスティング、視覚的な楽しみ、etc...見所満載です。
そして、何よりも中谷美紀さん。素敵ですよ。
本当に素晴らしかったです。
PS:本人はやる気があっても、イメージが壊れることを恐れて女優の演技にストップをかける事務所がありますが、それが女優にとって逆効果だということも証明してくれたような気がして、それに関してもプチ嬉しい。
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