前回に引き続き、短評です。 今回は世間を賑わすであろう話題作をとりまとめて見ました。
■「父親たちの星条旗」
日米両方の視点から硫黄島の激戦を描いた話題作のアメリカ編。戦争の虚構を描いた問題作で、それは良い。
しかし、戦闘シーンで日本兵が殺される度に、何ともいえない気分に。。。
「あっ、おれ、日本人なんだ」って、今更ながらに思い知らされた。日本側から描いた「硫黄島からの手紙」(12月公開)がなければ、正直気持ち的にちょっと辛い。
あと、あまり有名な俳優が出ていないし、当然、軍服を着ているので、誰が誰なのか良く判らないまま物語が突き進み、やや置いてけぼり感を味わった。。。予め、役者の顔と役名をある程度頭に叩き込んでから見た方が良いかも。
■「木更津キャッツアイ ワールドシリーズ」
シリーズのファン以外、その世界観に入ることはなかなか容易ではないであろう一品。伊藤Pは「にゃ〜」なので無問題。(本コラム#23参照)
しかしながら、「日本シリーズ」から3年。ややその熱も冷めてしまった感があり、これまた置いてけぼり。。。更に、なんか前半から中盤まで、もたもたしていて、エンジンかかるまでがちょっと時間を要するんだよねぇー。
やっぱりさー、弾けないと。「キャッツ」はさ。
テンポの悪さが、映画の勢いを止めてしまっているけど、後半盛り返す。トータルとしては、これでバイバイ!ということで、スッキリと気持ちの良い終わり方をしていて好感が持てた。
まぁ、ファンはなんと言われようが見るよな。
■「デスノート the Last name」
「前編」は賛否両論ありましたが、伊藤Pは、あの原作をどう映画化しているのか?夜神月とLを藤原竜也と松山ケンイチはどう演じているのか?リュークの描写はどうだ?監督は金子修介で大丈夫なのか?といった興味があり、比較的楽しく見ることが出来ました。
そして、その興味が「前編」でクリアにされた今、本作が伊藤Pを惹き付けなくてはならいのは、世界観を壊さずしての斬新な展開と結末でしょう。
まぁ、映画化にあたり大胆な脚色を試みながらも、原作ファンも楽しませようという気持ちは充分に伝わる。
でも、足りないんですよ。月とLの心理戦が肝なのに。。。
鑑賞半ばで激しい尿意に襲われたのも手伝って、「もうどーでもいいわぁぁぁぁぁ」と心の中で叫んでおりました。
尿意のせいで激しく置いてけぼりを食らった悲劇の一本!?
■「手紙」
個人的には大好きな作品。近年、観客を泣かせるために作られる映画はたくさんあります。この映画も涙が頬を伝いますが、その手の映画とは一線を画していると思う。
兄が殺人犯ということで、社会から爪弾きを食らう弟・直貴の苦悩。自分は悪くないのに。。。という絶望感や、兄に対するやるせない感情。その後に訪れる直貴の心の変化は、かなりパーソナルで見る者の心に響く。
そして、直貴だけでなく、犯行を行った加害者である兄、被害者の家族といった、殺人事件に絡んでしまった人々を真摯にそれぞれの立場で描く事によって、殺人が引き起こす様々な悲劇を浮き彫りにする。
個人レベルの問題に焦点を当てながらも、社会の暗部を照射させる。だから観客は考えさせられる。
観客に考える切欠を与えることを目的としつつ、最終的に泣かせる。ここが他の“泣かせる映画”と違う点だと思う。 ということで、この作品は置いてけぼりを食らわずに、映画に乗ることが出来ました。
あっ、そうそう、「手紙」は役者も良くて、特に被害者家族を演じた吹越満が印象的だったのですが、
可愛すぎて、ひとり浮いちゃっている人がいまして。。。残念ねぇ。
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